ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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フジロック・ベスト5 第4位!

2009-08-05 08:18:48 | フジロック
PRISCILLA AHN / IN A TREE

フジロック・ベスト5、第4位はプリシラ・アーン!!!

山の中というシチュエーションでプリシラ・アーンを見るのが楽しみでした。フェスで観るプリシラ、絶対良いに決まってますよね。彼女の持つ朗らかな魅力と山の空気が相まって、古き良き地代のフォーク・フェスのような、どこか牧歌的でゆったりとした極上な雰囲気が味わえるのではないかと。

しかし、オレンジ・コートで始まったプリシラのステージは、そんなフェスらしい緩さとはちょっぴり違うものでした。彼女の透明過ぎる歌声は、夕闇にしっとりとした繊細さを染み込ませ、辺りを不思議な静寂で包み込み、私たちはその静けさの中ただただ五感を研ぎ澄ましてじっと聴き入る、そんなライヴでした。そしてそれはまた、彼女のもつユニークな個性をまざまざと思い知らされたライヴでもありました。

彼女の個性といえば、その美しい歌声。最近の女性SSWと言えば、やたらと強い個性を振りかざして歌うタイプが主流に思えますが、そんな中、あまりにも素直且つストレートな歌唱で、癒しと落ち着きを与えてくれるプリシラ・アーン。その魅力は昨年の来日公演でも発揮されていましたし、もちろん私はそんなプリシラが大好きでした。ですが夕闇迫る山の中で聴くプリシラ・アーンは一味違いました。彼女の歌声は素朴ではなくピュアなのです。そのピュアさは歌えば歌う程に純度を増していきます。曲順等詳細は既に曖昧になってますが、彼女のオフィシャルサイトにこの日のセット・リストが載っていました。1曲目は「Wallflower」。2曲目は「I Don't Think So」、さらに「Willow Weeping」、「Opportunity To Cry」と続いたようです。私はおそらく3曲目「Willow Weeping」辺りからボーっとし始めちゃって、なんだか不思議な気分になってしまいました。

歌声のピュアネスがもたらす恍惚感。その純度が高まる程に何処かへ連れ去られてしまいそうになる。曲が終わる旅に意識的に「イェー!」だの「ヒュー!」だのと大声を上げて現実に戻る感じ。1曲ごとに照れながら「ありがとうございます』と笑顔を見せるプリシラはただただ可愛い~。ですが彼女がまた歌い始めれば辺りは一瞬にして不思議な静寂に包まれる。山の空気にプリシラの透き通った声がスーっと溶け込んでいくよう。小気味良いフィンガー・ピッキングにうっとりさせられた「In A Tree」。私の大好きなハリー・ニルソンのカヴァー「Moonbean Song」。さらにはカズーを吹きながらちょっぴりコミカルな「Boob Song」。本来ならこの「Boob Song」で一気に場がほぐれ、プリシラらしい屈託の無い暖かさが場内を包むはずなのですが、苗場の山ではそうはいきません。場内は透き通ったピュアな静謐感に依然として包まれています。夕闇の静けさのなか、プリシラの声がもたらす魔力は並ではなかったのです。

今回のプリシラ・アーンには、前回の来日とは違うバック・メンバーが二人同行しています。女性ベーシストと、鍵盤等マルチにバック・アップする男性ミュージシャン。この二人が曲によってはバック・コーラスをとります。ですが、プリシラと言えばフット・スイッチを使った一人多重コーラスです。この日もバック・コーラスをとれるメンバーが居るにもかかわらず、敢えて多くの曲で一人多重コーラスを多用していました。私はこれまで、プリシラのこのフット・スイッチ技については、一人でアコギを弾き語る際でもハーモニーがとれるようにと、あみだされた技だと思っていました。実際、最初はそうだったかもしれません。ですが、今回の苗場では間違いなく、一人多重コーラスだからこその効果が現れていました。一人の声が思いもよらぬ瞬間に二人とになり、さらに三人になる。次々に重ねられていくハーモニーは複雑さを増し、それはアート的であり幻想的でもある。そんな、めくるめくコーラス・ワークがまるで音の万華鏡のように響いてきます。新曲として演奏された「Empty House」では確か、ハーモニーがリプレイされるなか、プリシラはギターを弾いてるだけみたいな瞬間もあったような。それらがもたらす不思議な感覚はプリシラの持つ世界観の深さを感じさせてもくれました。

そして辺りはますます暗くなり、ライティングが映える時間帯へと移ってきます。プリシラの幻想的なステージがさらに目映い光を帯びてきます。しかしこの光が思わぬハプニングを呼びました。「Are We Different」の演奏中、ライトが当たったプリシラの白い右腕に、大きめの虫がとまってしまったのです! 次の瞬間、プリシラは「Oh!」だか「No!」だかという奇声を上げて、歌と演奏を中断し、虫を振り払いました。そして笑いが止まらない。あのプリシラ独特のカラカラ、コロコロとした笑い声がオレンジ・コートに響きました。ちょうど虫がとまったあたりに指で輪っかをつくり「Big!」とか言ってましたから、そうとう驚いたんでしょうね。場内からは「可愛い~」なんて声が漏れたり…。はい、確かに可愛かったです! だって嫌そうな顔はいっさいせず、まるでそんな虫騒動すら楽しんでるがごとくの笑顔なのですから。さらに「Are We Different」をもう一度最初から仕切り直せば良いのに、ちょっぴり笑いながら止まった辺りからやり直すというグダグダ感。ここでそんなプリシラを応援するかのごとく自然に場内から手拍子が! なんかフェスらしくなってきました!

しかし次の曲(セットリストでは「Rain」となっています)を演奏中にはさらに大きな虫がプリシラの首筋辺りを目がけてぶつかってくる。プリシラは避ける訳にもいかず一瞬演奏が乱れますが、幸いその虫はプリシラには止まらず何処かへ逃げていってくれました。演奏を続けながらも、すかさず笑顔で「Oh my god!」と言ったプリシラがまた可愛かったです。この虫騒動で一気に空気がほぐれ、観客とステージの距離もぐっと近くなった印象。それまでの不思議な恍惚感を伴ったステージも素晴らしかったですが、プリシラの人柄が滲み出た後半のセットもやはり最高でした。ですがその一方でステージ上を飛び交う虫達がいつまたプリシラを襲うんじゃないかと気が気じゃなかったり…。

終盤は名曲「Dream」がやっぱり良かったですね~。会場のみんなもこの曲を待っていたのか、ひときわ大きな拍手が沸き上がりました。数分前の可愛らしい虫騒動を忘れ、ただただ美しい声が奏でるメロディーに浸りました。もうここがフェスであることすら忘れてしまいそうでした。最後は昨年の来日公演でも歌っていた、宮崎映画「耳をすませば」から「Country Road」の日本語ヴァージョン。日本のファンへのサービス曲だとは思いますけど、これが案外良い味わいなんですよ。プリシラの素直な歌唱が心に染みるんですよね~。

やっぱりプリシラの声は素敵です。そしてこれを野外、しかも夜の山で聴けたというのが嬉しいです。感無量でした!!

ちなみにプリシラ・アーンは同じ日、オアシスの岩盤ブースでアコースティック・ライヴ&サイン会があったのですが、イーライ・リードと被っていたので観れませんでした…。サイン会参加券もゲットしていたのですが、最後まで迷った末にイーライ君を選んでしまいました。ま、それはそれで後悔はしてませんけどね…。ちなみにこのオレンジでのプリシラは、グリーンのベン・ハーパーや清志郎トリビュートと被ってました。私はベンを半分ぐらいで後にしてオレンジへ急いだんです。そして清志郎は諦めました。今回のフジは、観たいアクトが多かった割には案外被りは少なかったのですが、何故かプリシラ周辺だけ被りまくりでした…。

既に記憶が曖昧なので、間違い等ありましたらごめんなさいね。


*写真は岩盤ブースで買った来日記念のミニ・アルバム「IN A TREE」。このジャケにサインを頂くはずだったんですけど…。残念です。いつかリベンジします!