ALLEN TOUSSAINT / LIFE, LOVE AND FAITH
アラン・トゥーサンのビルボード・ライヴ東京公演が間近に迫ってきました。そして2ヶ月後にはファンキー・ミーターズがやってきます。わずか2ヶ月の間にトゥーサンとミーターズが観れるなんて夢のような話ではありませんか!!
プロデューサー/コンポーザーとして60年代初頭から、ジェシー・ヒル、アーロン・ネヴィル、アーマ・トーマス、アーニー・ケイ・ドウ、ベニー・スペルマン、リー・ドーシーなど、モッチャリとしたニューオーリンズR&Bでヒットを連発し破竹の勢いだったアラン・トゥーサンは、65年にマーシャル・シホーンと共同でサンスー・プロダクションを立ち上げます。そして新たなニューオーリンズのサウンドを模索しはじめます。それはミュージック・マガジン誌05年12月号のニューオーリンズ特集に曰く「R&Bシーンの当時の主流だったスタックス/ヴォルト・サウンドをヒントに、なんとかニューオーリンズ流儀で表現できないか」というものだったそうです。そこでミーターズと出会います。
ミーターズの中心人物アート・ネヴィルも自伝本「ネヴィル・ブラザーズ自伝」の中で、ミーターズ結成前からブッカーT&ザ・MGズの最小限のリズム・セクションによる隙間を活かしたファンキーなサウンドに注目していたと語っています。そしてMGズは自分たちでもヒットを出し、スタックスのサウンド全体の基盤も作っていたと絶賛しています。そんなアートが率いるミーターズ、しかもMGズと同じ編成のインスト・バンドですから、ニューオーリンズ版のスタックスを目指すトゥーサンにとっては願ってもないバンドだった訳です。
ミーターズはサンスーと契約し69年にデビューします。実はそれまではミーターズという名前ではなく、アート・ネヴィル&ザ・ネヴィル・サウンズと名乗っていたそうですが、デビューに際して改名したようです。そして自身の録音と平行して、トゥーサンのセッションへも頻繁に駆り出されます。特にリー・ドーシー、ドクター・ジョン、そしてトゥーサン自身のソロ作などは、ニューオーリンズR&Bを確実に1ステップ上げた名演傑作揃い。MGズにポリリズミックな“タメ”と“跳ね”を注入したかのようなミーターズ流濃密ファンクは、バンド単体よりトゥーサンの息が掛かっている分、より人懐っこく丸みを帯びたファンクネスを呈し、トゥーサンもここぞとばかりに名曲を連発して生み出しました。
74年にはトゥーサンがシーセイント・スタジオを立て、新しいニューオーリンズR&Bブランドは量産体制を整えます。この頃にはトゥーサンのサウンドはニューオーリンズの外まで響き、数々のアーティストがそれを求めてニューオーリンズまでやってきました。後に“トゥーサン詣で”と呼ばれる現象です。もちろんそのセッションの多くでミーターズもしくはそのメンバー達が起用されます。
最大のヒットはパティ・ラベルを擁するラベルの「レディー・マーマレード」。さらにジェス・ローデン、キング・ビスケット・ボーイ、ブロウニング・ブライアント、ZZ・ヒル、アルバート・キングなど。そして“トゥーサン詣で”最大の大物といえばポール・マッカートニー。ウィングスの「Venus And Mars」をシー・セイント・スタジオで録音しています。残念ながらトゥーサンがプロデュースしたり、ミーターズがバックを務めたりというディープな邂逅はなかったようですが、トゥーサンは「Rock Show」でピアノを弾き、アルバム完成船上パーティにミーターズが招かれ、その模様はライヴ盤になっています。
ニューオーリンズに新しい時代をもたらしたトゥーサンとミーターズの出会いはまさに運命的なものでしたが、逆に両者の確執もよく語られるところ。原因はトゥーサンが音楽的に全く関わっていないいくつかのミーターズ関連の作品にもプロデューサーとしてトゥーサンの名がクレジットされてしまうこと。そのことに対し自伝本の中でアートは「今でもそいつが気に食わない」と語ってたり。でもアラン・トゥーサンって凄く優しそうで紳士的なイメージがあるんですけどね…。実際何かのインタビューで、トゥーサンはミーターズのレコーディングについて自分の仕事は彼らをスタジオに入れるだけで、後は彼らが勝手にやる。見たいな事を言って認めてたような。クレジットの件はトゥーサンの意思というより、何かビジネス的な理由だったのかもしれませんね。
でもミーターズは最後のアルバム「NEW DIRECTION」でワーナーに移籍し、やっとトゥーサンの呪縛から離れられたのに、何故かトゥーサン作の「I'm Gone」を取り上げていたり。この辺もよく分かりません…。実際、本当にミーターズとトゥーサンの間に確執があったのか?そして仲直りはしてないのか? その辺は私にはよく分かりません。ちなみにカトリーナ被災のベネフィット・コンサートの模様を収めたライヴ盤「HIGHER GROUND」ではアートとアーロンのネヴィル兄弟とアラン・トゥーサンが仲良く「Go To The Mardi Gras」を演っています。
いつかアラン・トゥーサンがファンキー・ミーターズと一緒にアルバムを作るなんて事は無いでしょうかね~? とりあえずは両者の来日公演を観て、それぞれの今の魅力を堪能しながら、古き良き70年代に思いを馳せたいと思います。
さて、まずはアラン・トゥーサンです。ビルボードライヴ東京。私は29日金曜に行きます。ジャズの古典に焦点を当てた新作「THE BRIGHT MISSISSIPPI」発表直後の来日ということですが、この作品を反映したライヴになるのでしょうか? それともいつも通りヒット曲&名曲連発のベスト選曲でくるのか? 個人的にはどちらでもOKですが、発表メンバーを見る限り、おそらく後者なのでは。
レナード・ポーチェ/Renard Poche(Guitar)
ハーマン・ルボー/Herman LeBeaux(Drums)
ローランド・ゲリン/Roland Guerin(Bass)
ブライアン‘ブリーズ’カヨリ/Brian’Breeze'Cayolle(Tenor Sax)
前回はギター・レスでしたが今回はレナード・ポーチェが参加。近年ではファッツ・ドミノのトリビュート・アルバムで、ミーターズのジガブー・モデリステとジョージ・ポーター・ジュニアと共にハービー・ハンコックのバックでファンキーなギターを弾いてた人ですね。これは前回よりファンキーなステージが期待できるかも。そしてベーシストがチェンジしてますが、ドラムスとサックスは前回と同じ顔ぶれですね。きっとタイトな演奏を聴かせてくれることでしょう。楽しみです!
*上写真は72年のアラン・トゥーサンのソロアルバム「LIFE, LOVE AND FAITH」。トゥーサン&ミーターズを代表するアルバムの一つ。メロウ&ファンキー、そして洗練と泥臭さが同居したあの時代のニューオーリンズならではの怪しさが光ります。
LEE DORSEY / YES WE CAN...AND THEN SOME
こちらはリー・ドーシーが70年に発表した名盤にボーナストラック9曲を加えたリイシュー盤。トゥーサン製作による新生ニューオーリンズR&Bの規範とも言える傑作アルバム。もちろんミーターズも参加。
DR.JOHN / IN THE RIGHT PLACE
ドクター・ジョンの長いキャリアの中でも名作の1枚に数えられる「IN THE RIGHT PLACE」。ドクターのスワンピーな感性とミーターズの泥臭さが溶け合う極上のニューオーリンズ・ファンク。73年の作品。
LABELLE / NIGHTBIRDS
商業的な意味ではトゥーサン関連で最も成功した作品。ジガブーは不参加だそうですが、そこには若干ニューオーリンズ色を薄めにという意図があったのでしょうか?トゥーサンの絶妙な按配が光ります。そしてジョージ・ポーター・ジュニアの間を取りながら蛇行するベースラインは相当腰に来ます。
ALBERT KING / NEW ORLEANS HEAT
ブルース界の大御所によるニューオーリンズ録音。78年作。ミーターズからはジョージとレオが参加。スタックスで名作を残した偉人によるシー・セイント・スタジオ録音というのも、今考えるとなかなか興味深いですね。
アラン・トゥーサンの最新作。こちらについてはまた後日。
~関連過去ブログ~
09.04.23 フジ予習:ファンキー・ミーターズ part 1
09.05.21 フジ予習:ファンキー・ミーターズ part 2
07.10.25 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その1(07年の来日公演)
07.10.26 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その2(07年の来日公演)
06. 6. 2 アラン・トゥーサン・ライブ!(06年6月、原宿BLUE JAY WAYでのライブ)
アラン・トゥーサンのビルボード・ライヴ東京公演が間近に迫ってきました。そして2ヶ月後にはファンキー・ミーターズがやってきます。わずか2ヶ月の間にトゥーサンとミーターズが観れるなんて夢のような話ではありませんか!!
プロデューサー/コンポーザーとして60年代初頭から、ジェシー・ヒル、アーロン・ネヴィル、アーマ・トーマス、アーニー・ケイ・ドウ、ベニー・スペルマン、リー・ドーシーなど、モッチャリとしたニューオーリンズR&Bでヒットを連発し破竹の勢いだったアラン・トゥーサンは、65年にマーシャル・シホーンと共同でサンスー・プロダクションを立ち上げます。そして新たなニューオーリンズのサウンドを模索しはじめます。それはミュージック・マガジン誌05年12月号のニューオーリンズ特集に曰く「R&Bシーンの当時の主流だったスタックス/ヴォルト・サウンドをヒントに、なんとかニューオーリンズ流儀で表現できないか」というものだったそうです。そこでミーターズと出会います。
ミーターズの中心人物アート・ネヴィルも自伝本「ネヴィル・ブラザーズ自伝」の中で、ミーターズ結成前からブッカーT&ザ・MGズの最小限のリズム・セクションによる隙間を活かしたファンキーなサウンドに注目していたと語っています。そしてMGズは自分たちでもヒットを出し、スタックスのサウンド全体の基盤も作っていたと絶賛しています。そんなアートが率いるミーターズ、しかもMGズと同じ編成のインスト・バンドですから、ニューオーリンズ版のスタックスを目指すトゥーサンにとっては願ってもないバンドだった訳です。
ミーターズはサンスーと契約し69年にデビューします。実はそれまではミーターズという名前ではなく、アート・ネヴィル&ザ・ネヴィル・サウンズと名乗っていたそうですが、デビューに際して改名したようです。そして自身の録音と平行して、トゥーサンのセッションへも頻繁に駆り出されます。特にリー・ドーシー、ドクター・ジョン、そしてトゥーサン自身のソロ作などは、ニューオーリンズR&Bを確実に1ステップ上げた名演傑作揃い。MGズにポリリズミックな“タメ”と“跳ね”を注入したかのようなミーターズ流濃密ファンクは、バンド単体よりトゥーサンの息が掛かっている分、より人懐っこく丸みを帯びたファンクネスを呈し、トゥーサンもここぞとばかりに名曲を連発して生み出しました。
74年にはトゥーサンがシーセイント・スタジオを立て、新しいニューオーリンズR&Bブランドは量産体制を整えます。この頃にはトゥーサンのサウンドはニューオーリンズの外まで響き、数々のアーティストがそれを求めてニューオーリンズまでやってきました。後に“トゥーサン詣で”と呼ばれる現象です。もちろんそのセッションの多くでミーターズもしくはそのメンバー達が起用されます。
最大のヒットはパティ・ラベルを擁するラベルの「レディー・マーマレード」。さらにジェス・ローデン、キング・ビスケット・ボーイ、ブロウニング・ブライアント、ZZ・ヒル、アルバート・キングなど。そして“トゥーサン詣で”最大の大物といえばポール・マッカートニー。ウィングスの「Venus And Mars」をシー・セイント・スタジオで録音しています。残念ながらトゥーサンがプロデュースしたり、ミーターズがバックを務めたりというディープな邂逅はなかったようですが、トゥーサンは「Rock Show」でピアノを弾き、アルバム完成船上パーティにミーターズが招かれ、その模様はライヴ盤になっています。
ニューオーリンズに新しい時代をもたらしたトゥーサンとミーターズの出会いはまさに運命的なものでしたが、逆に両者の確執もよく語られるところ。原因はトゥーサンが音楽的に全く関わっていないいくつかのミーターズ関連の作品にもプロデューサーとしてトゥーサンの名がクレジットされてしまうこと。そのことに対し自伝本の中でアートは「今でもそいつが気に食わない」と語ってたり。でもアラン・トゥーサンって凄く優しそうで紳士的なイメージがあるんですけどね…。実際何かのインタビューで、トゥーサンはミーターズのレコーディングについて自分の仕事は彼らをスタジオに入れるだけで、後は彼らが勝手にやる。見たいな事を言って認めてたような。クレジットの件はトゥーサンの意思というより、何かビジネス的な理由だったのかもしれませんね。
でもミーターズは最後のアルバム「NEW DIRECTION」でワーナーに移籍し、やっとトゥーサンの呪縛から離れられたのに、何故かトゥーサン作の「I'm Gone」を取り上げていたり。この辺もよく分かりません…。実際、本当にミーターズとトゥーサンの間に確執があったのか?そして仲直りはしてないのか? その辺は私にはよく分かりません。ちなみにカトリーナ被災のベネフィット・コンサートの模様を収めたライヴ盤「HIGHER GROUND」ではアートとアーロンのネヴィル兄弟とアラン・トゥーサンが仲良く「Go To The Mardi Gras」を演っています。
いつかアラン・トゥーサンがファンキー・ミーターズと一緒にアルバムを作るなんて事は無いでしょうかね~? とりあえずは両者の来日公演を観て、それぞれの今の魅力を堪能しながら、古き良き70年代に思いを馳せたいと思います。
さて、まずはアラン・トゥーサンです。ビルボードライヴ東京。私は29日金曜に行きます。ジャズの古典に焦点を当てた新作「THE BRIGHT MISSISSIPPI」発表直後の来日ということですが、この作品を反映したライヴになるのでしょうか? それともいつも通りヒット曲&名曲連発のベスト選曲でくるのか? 個人的にはどちらでもOKですが、発表メンバーを見る限り、おそらく後者なのでは。
レナード・ポーチェ/Renard Poche(Guitar)
ハーマン・ルボー/Herman LeBeaux(Drums)
ローランド・ゲリン/Roland Guerin(Bass)
ブライアン‘ブリーズ’カヨリ/Brian’Breeze'Cayolle(Tenor Sax)
前回はギター・レスでしたが今回はレナード・ポーチェが参加。近年ではファッツ・ドミノのトリビュート・アルバムで、ミーターズのジガブー・モデリステとジョージ・ポーター・ジュニアと共にハービー・ハンコックのバックでファンキーなギターを弾いてた人ですね。これは前回よりファンキーなステージが期待できるかも。そしてベーシストがチェンジしてますが、ドラムスとサックスは前回と同じ顔ぶれですね。きっとタイトな演奏を聴かせてくれることでしょう。楽しみです!
*上写真は72年のアラン・トゥーサンのソロアルバム「LIFE, LOVE AND FAITH」。トゥーサン&ミーターズを代表するアルバムの一つ。メロウ&ファンキー、そして洗練と泥臭さが同居したあの時代のニューオーリンズならではの怪しさが光ります。
LEE DORSEY / YES WE CAN...AND THEN SOME
こちらはリー・ドーシーが70年に発表した名盤にボーナストラック9曲を加えたリイシュー盤。トゥーサン製作による新生ニューオーリンズR&Bの規範とも言える傑作アルバム。もちろんミーターズも参加。
DR.JOHN / IN THE RIGHT PLACE
ドクター・ジョンの長いキャリアの中でも名作の1枚に数えられる「IN THE RIGHT PLACE」。ドクターのスワンピーな感性とミーターズの泥臭さが溶け合う極上のニューオーリンズ・ファンク。73年の作品。
LABELLE / NIGHTBIRDS
商業的な意味ではトゥーサン関連で最も成功した作品。ジガブーは不参加だそうですが、そこには若干ニューオーリンズ色を薄めにという意図があったのでしょうか?トゥーサンの絶妙な按配が光ります。そしてジョージ・ポーター・ジュニアの間を取りながら蛇行するベースラインは相当腰に来ます。
ALBERT KING / NEW ORLEANS HEAT
ブルース界の大御所によるニューオーリンズ録音。78年作。ミーターズからはジョージとレオが参加。スタックスで名作を残した偉人によるシー・セイント・スタジオ録音というのも、今考えるとなかなか興味深いですね。
アラン・トゥーサンの最新作。こちらについてはまた後日。
~関連過去ブログ~
09.04.23 フジ予習:ファンキー・ミーターズ part 1
09.05.21 フジ予習:ファンキー・ミーターズ part 2
07.10.25 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その1(07年の来日公演)
07.10.26 アラン・トゥーサン@Billboard Live TOKYO その2(07年の来日公演)
06. 6. 2 アラン・トゥーサン・ライブ!(06年6月、原宿BLUE JAY WAYでのライブ)