ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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トロンボーン・ショーティ@渋谷クアトロ

2010-12-16 23:06:53 | ソウル、ファンク
TROMBONE SHORTY / BACKATOWN

12月13日、トロンボーン・ショーティを観に渋谷 Club Quattroへ。わりと開演ぎりぎりに会場入りしたのでフロアには降りず、一段高くなっているところで悠々と観ることに。

ほどなくしてメンバーが登場! トロンボーン・ショーティはその“ショーティ”という愛称もどうなの?って思う程の精悍さ。バンドはドラムス、ベース、ギター、サックスとショーティの5人編成。最新作「BACKATOWN」のタイトル曲「Backatown」からスタート。ショーティがトロンボーンで印象的なリフを刻みだし、観客達を新時代のニューオーリンズ・ファンクの渦のような波に飲み込んでいく。そして肉感的なリズムはヒップホップとかクラブ的な要素が削ぎ落とされた分、純粋にバンド感が凝縮されたようなライヴ・サウンド。格好良い!!!

前半は最新作からのナンバーが中心のセット。まず、想像以上にリズムが強力。ドラムはかなりアグレッシヴに叩きまくってましたが、決してへヴィーではなく、どちらかというとジャズ・ファンク的なハネと切れがある。対してベースは重量級な上にとんでもないグルーヴ・マシンで、この両者のリズムにグイグイ引き込まれましたね。さらにショーティがトロンボーンとトランペットを持ち替えながらソロを吹きまくり、観客を煽りに煽る。オリエンタルなホーンとヘヴィーなギターが高速で突進する「Suburbia」。ショーティがソウルフルな喉を聴かせてくれたアラン・トゥーサンの「On Your Way Down」。重心の低いグルーヴがフロアを揺らした「Hurricane Season」。最新作からの楽曲群がライヴでさらに勢いと鮮度を増している感じ。

そして唯一前作からのナンバー「Orleans & Clalborne」では、カーティス・メイフィールドのようにチャカポコ鳴らすギターにやられました。このギタリストは、歪んだギターでロックに決めたかと思いきや、ワウを効かせてニュー・ソウルっぽい雰囲気を醸したり、このバンドのミクスチャー感を一手に体現しているような感じでしたね。「Where Y'At」のギター・リフなんてアルバムで聴くより断然ブルース・ロック的で痺れました。で、またこのギターとホーンの絡みが格好良いんですよ!

そしてセットの中盤になるとカヴァーを盛り込みながら多彩なフィーリングでより深淵な世界へ。まずは何やらヴードゥーのような怪し気な雰囲気を醸すサックス・ソロ。クール且つフリーキーなフレーズで徐々に熱を帯びていく。そして盛り上がってきたところで、スカのリズムへなだれ込む。「Groove On」という曲でしょうか? 正直知らない曲でしたが、明るいトロンボーンのメロディや、ファルセットを交えながら早口で歌うショーティの歌唱が印象的でした。曲名通りグルーヴィーなノリも最高!

切れ味のあるギラギラとしたロックなギター・ソロに続いて「On The Sunny Side Of The Street」。ルイ・アームストロングでも知られるジャズ・スタンダード。良いですね~。ニューオーリンズのトランぺッターはみんなルイ・アームストロングが大好きなんでしょうね。で、ここでのショーティのトランペット・ソロがまた素晴らしかった!滲みましたね~。さらに後半には息を吸いながら吹き続けるみたいな、いかにもジャズ・トランぺッター的な技で、延々と息継ぎ無しで一音を鳴らし続ける。コードが一巡する度に、まだ続けるの? って感じに観客も驚きつつ拍手喝采。これは凄かった!

さらにマーヴィン・ゲイの「Let's Get It On」。これも嬉しい選曲。流石に歌はマーヴィンと比べちゃうと見劣りしてしまいますが、ショーティ自身も楽しんで歌ってる雰囲気で良かったですね~。そして何と言ってもこの曲が持つトロっとした幸福感と、フワッとした暖かい音色のホーンが最高でした。続いておそらく「Same Thing On」という曲。これも知らない曲でしたが、この曲は後半のベース・ソロが強力でした。終始寡黙且つ朴訥にベースを弾いていた彼でしたが、紹介されるとグワングワンと踊りながらソロを弾き始める。あれ?いきなりキャラが変わっちゃったよ!と思っているうちに、チョッパーを混ぜたり、「Smoke On The Water」のフレーズを弾いてみたり、ぶっといボトムのベースラインを次々に繰り出してくる。そしてステージを駆け回るような仕草を見せ、最終的にはひっくり返って足をバタバタさせながら。当初はどこか強面な雰囲気でしたが、意外とお茶目なベースマンでした。

そしてステージはいよいよ終盤。やたらファンキーなベース・ラインが強烈な曲が、突如JBファンクのようなギター・ブレイクが入ると同時に何やらジェイムス・ブラウンの名曲達をコラージュしたような曲に。これが超ファンキーで格好良かった!! ショーティもJBダンス的な動きで盛り上げてましたし、「I Got the Feelin'」の決めゼリフのように“ベイビー、ベイビー、ベイビー”と観客に歌わせたり。さらにドラム・ブレイク+サックス・ソロのような展開になり、複雑怪奇な“決め”の数々を怒濤の如くの勢いでショーティがさばいていく。まるで踊るようにコンダクトするショーティの姿はなんか可愛かったですね~。

全体的にショーティのエンターテイナー振りには驚きましたね。ごくごく自然体なのに、グイグイと観客を引き込んでいく。そしてしっかりバンド・メンバーの見せ場も作る。ジャム・バンド的なインプロ展開もたっぷりありましたしね。どの曲だったかは既に記憶の彼方ですが、ギターVSショーティ、サックスVSショーティという掛け合いもスリリングでした。途中、クリスマスのフレーズを織り込んだりもしていましたね。まあ、これでもか!と言う程のライヴ・バンドですよ!

アンコールは多分「Bet You Like It」という曲。この曲も知らない曲でしたが、ソウルフルな高揚感のある良い曲でしたね。観客みんなで手を振ったり飛び跳ねたり。最後は“パ~ラッパッパ~”みたいに大合唱。とんでもない一体感。私も堪らずこの頃にはフロアに降りて踊ってました。異様な盛り上がりの中で終了し、ショーティはトロンボーンとトランペットを両手で高らかに掲げて去っていきました。もちろん観客の拍手は鳴り止みませんが、ここで無情の客電が…。ぼちぼちお客さんも帰り始めた頃、ショーティ御一行がまさかの帰還。フロア全体が喜びに満たされながらの「聖者の行進」。これはニューオーリンズの空気を感じましたね!そしてソロモン・バークの「Everybody Needs Somebody To Love」へ。会場はお馴染みの“ユー!ユー!ユー!”で盛り上がる。メンバーは並んで腰を屈めながらステップを踏んでる。いや~、楽しい! 最後はメンバー全員が楽器を取り替えてのセッション。ちなみにショーティはドラム。ベースの彼がフロントでトランペット。ドラマーはここぞとばかりにギター・ソロを弾きまくったり。嗚呼、天晴なライヴでした!


それにしても強力なバンドですね。私はもう少しニューオーリンズ臭が濃くなるかとも思っていたのですが、これはもう「ニューオーリンズの」という括りが必要のないミクスチャー・ファンクですよ。ですが小手先のミクスチャーとは明らかに違う、肉感的で生命力溢れるような音像には、流石にガンボな街ニューオーリンズの土壌を感じさせられます。グラミー賞にもノミネートされたトロンボーン・ショーティの勢いは、ニューオーリンズのファンク・シーンを変えるかもしれませんね。いや、これは既にとっくの昔から変わりかけていた一つの成果なのかもしれません。これからの展開がますます楽しみである反面、昔ながらのニューオーリンズが大好きな私にとってはちょっぴり複雑だったりも…。


終演後に携帯で撮ったセットリスト。前半はこの通りの曲順だったと思いますが、後半は大分違う気がしますがどうなんでしょう? 「Do For Me」って何ですか?



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