アッパレじゃ!

大好物は舞台観劇♪ようござんすか?ようござんすね。”私見”バリバリ入りますっ!ネタばれアリアリ~。

南の島に雪が降る 泣いて笑ってまた泣いた…

2015年08月05日 | 

今年の3月に本屋に行ったら…
復刊したらしく、平積みになっておったヨ。 
加東大介って!あの映画俳優の!
これはひとつの出逢いだね。買うよね。
で、読んだんだよぉお。
ひたすら心がジンジンするのよ…ぅ。
電車の中で涙を堪えるのに必死…ぃ。

  南の島に雪が降る
     著者:加東大介
     出版:ちくま文庫
     発売:2015/3/10
   価格:800円+税

     1961年 文藝春秋新社
     1983年 旺文社文庫
     1995年 筑摩書房〈ちくま文庫〉
     2004年 光文社知恵の森文庫
     2015年 ちくま文庫-新装版

映画があったよね。
『南の島に雪が降る』(1961年東宝)
加東大介が主演で、森繁久弥、渥美清、伴淳三郎、
三木のり平、フランキー堺、小林桂樹etc
太平洋戦争を描いた異色の名作。
薄っすらとしか覚えてないけど…。

昭和18年10月
俳優加東大介は、
大阪中座の楽屋で召集を受けた。
この舞台ともお別れか…。
やっぱり込み上げてくるものがあるよね…。
お姉さんから貰った舞扇を胸に…
沢村貞子なんだよ!お姉さんがっ。
知らんかったぁああ。
応召された先で、
甥の沢村アキヲが出ている映画を観ようとして、
憲兵に睨まれた時に、
前進座に出てる役者だってことを
判ってくれてさぁ。
大目に見てもらったりするのヨ。
ここで、作者の顔が判らなかったら
今ひとつクククって気分になれなんだけど、
あの!加東大介だからねぇ。

加東大介
俳優。本名、加藤徳之助。明治44年東京浅草生まれ。
東京府立七中を経て、昭和4年に二代目市川左団次の
門に入り、市川莚司を名乗る。
昭和7年前進座に入座。
昭和18年衛生伍長として応召、昭和21年に復員。
戦後は舞台、映画、テレビで活躍した。
「七人の侍」「用心棒」「社長シリーズ」
「陸軍中野学校シリーズ」他

昭和50年没。
沢村国太郎 兄
沢村貞子 次姉
長門裕之 甥
津川雅彦 甥

岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』(1967年東宝)を、
この間、お茶の間で観たのよぉ。
DVDを持ってるもんでさ。
何度観ても重圧感に押し潰されそうになる…ぅ。
阿南大臣の三船敏郎の存在感も然る事ながら、
畑中少佐役の黒沢年男のあの恐るべき狂気!!
え、あ、その話は置いておいて…。
そうしたら、NHKの職員役で出ているのを発見!
この本を読んだ後だったから、
この人は、この映画の時代の空気感を
肌で感じていたんだな…ぁ。
南方にいたんだもんな…ぁ。
そう思うと感慨深かったよ…。

敗戦が濃厚になりつつある中、
加東大介はニューギニア戦線へ!
着いた所はマノクワリ
…何処…どこにあるの…
インドネシア西パプア州の都市。
ニューギニア島の西端にあたる。 
へぇえ!パプアニューギニアといえば、
ラバウルしか知らんかった…ぁ。

島のいたる所に、
グループというか班というか…
たっくさんあるのよぉおお!!
どんだけの人がいるんだぁああ。
しかぁし、
ここでドンパチは起こらなかった!
米軍の定期的な空襲はあるんだけどね、
日本軍の想定外な出来事がっ。
大規模な戦闘はフィリピンで…。
でも最前線の兵士は知らない…。
「マノクワリに米軍が上陸する!」
そういうビラが散々撒かれて、
それじゃぁもっと南に行こう。ってことに。
でも全員じゃないんだね…。
「半分は転進(退却の別名)し、
残り半数でここを死守せよ」
その数約1万人。
加東大介は玉砕組(この言葉もスゴイ…)
として残されて…。
行ってしまう人達に、
遺品や遺書を託したんだよ…。
だけど…それは後に
”ニューギニア死の行進”と呼ばれる、
なんとも無謀な計画。
ジャングルの中を彷徨って餓死等で死亡…。
命令を下した将官はサッサと飛行機で
違う土地に飛んでったんだと!
戦わずして…味方に殺されたも同然…。
残酷過ぎる運命…。
戦争なんてしない方がいいよ…。

残留組はそんなこと知るわけなくってさぁ、
どーせ敵機の攻撃でやられるんだから、
少ない食料をガバガバ食いまくるっ。
ところが…
待てど暮らせど爆弾の雨は降ってこない…。
「長期体制を敷くように」
暫くしてそんな命令がっ。
なんじゃそりゃぁ…後の祭りじゃぁ…。
葉っぱ1枚でも、細っこい茎1本でも
貴重な貴重な食料。
なんともな…ぁ。
本気で自給自足の道をみつけないと…。

骨と皮だけになった人達が、
死んだ人の墓穴を掘りながら…息絶える…。
これが日常ってどうよ…どうなの…。

しかぁし!一つの光がぁああ。
いるんだよっ。
芋を作る技を身に着けてる人がぁあ。
なんとか食料危機を、
ほんのちょっとだけ脱することが出来て…。
それでもまだまだ
マラリアや栄養失調が蔓延中だよ。

戦局がどうなっているのかは、さっぱりわからなかった。
内地のことも知りようがない。
食べものは乏しかった。
すぐ横で、ボソリボソリと戦友が死んでいった。
お先真っ暗なのである。なにも希望はなかった。(本文より)

このままじゃぁダメだぁああ。
心を奮い立たせる何か!
鼓舞する何かがあれば!
司令部が考えたのは”情操教育”
白羽の矢がたったのが役者の加東大介!
これ、ノンフィクションですからぁあああ。
だからグググッッッ!とくるわけよぉお。

”演芸分隊結成”の御布令の威力は凄まじく!
我も我もと応募者殺到ぉおお!
芝居をするんだから、役者だけじゃなくって、
裏方さんも必要なんだぞ。
背景、小道具、衣装、鬘、脚本、化粧、
三味線弾き、歌手、舞踊etc
現役の人、昔取った杵柄の人、
はたまた門前の小僧さんまで!
そうそう、芸名を騙ってる人も!
あ!劇場を作る人達も!
これがまたちゃんといるんだよぉお。
スッゲェよぉおおお。

軍服を着てると、皆ただの兵隊さん。
だけど、それを脱ぎ捨てると、
個性豊かな人間になるんだねぇええ!!
大感動だっぁあああ!!

最初は漫才や手品や舞踊なんかをやった!
そうして本公演以外にも、出張公演が!
ダダっ広いジャングルの中に、
点在してる何十もの班を、
数グループに分かれて回るっ。
芋作りをやって、芝居の稽古して、慰問っ。
キツかったやろうなぁあ。
でも、ご祝儀が出たんだって。
イモとか、タピオカの饅頭、バナナ…。

ニューギニア生活も3年目になって…。
「司令官の転属について来ないか」
そう誘われた!
実は、”内地へ帰還”だったんだけど、
でもそれはトップシークレット。
加東大介は知る由もなく…。
だいたい、彼が抜けたら”演芸分隊”は
消滅しちゃうでしょうがぁあ。
でも…
一緒に行った方が生き延びられるかも…。
完成間近の劇場に入って独り…。
「少なくともここには”板”がある」
燃える!!役者魂ぃぃいい!!

最初は寸劇だった舞台も、
どんどん本格的になるわなるわぁ。
勿論、女形もいるのよぉおお。
キャァア♪
昭和20年4月29日から
「マノクワリ歌舞伎座」はほとんど
休まずに幕をあげつづけた。
1ヶ月毎に出し物を変えるから、
無休でやって30日で、
やっと兵士全員が観ることが出来る計算!
なななんとっ。
この精神!半端ないっ!!
でもっ、そんなことばっかりやってたら、
自給自足が不可能に…。
そこで入場料がオイモさんってことに!

ただの娯楽じゃない!
生きるための最後の綱…。
息を引き取ろうとする兵士には
「今度の歌舞伎座を観ないで死ねるのか!」
そう激励して、
やっと命を繋ぎとめるという…。

演劇って、芝居って、
大惨事が起きて、
生き死にに直面したら、
無用なものになってしまう。
所詮は娯楽だから…。
私はズ~っとそう思ってきたんだけど…。
そうじゃないんだね!!
芝居を愛する者として、
こんなに嬉しいことはないよぉおおお。

島のあちこちに色んな班があってね…。
その中でも、
特に悲惨な地域で生きる人達が…。
なんちゅうか…ひどい仕打ちだわ…。
詳しくは…本を読んでぇえ。
「今回は観に来れたけど次回はダメかも…」
そういう思いで劇場に辿り着く人達…。

新しい司令官から
「雪を降らせられないか」
そう言われたのが始まりなんだけど、
以前、病院で「何か欲しいものは?」
東北出身の若い兵士に聞いたら
「雪を見たいなー」
そう言いながら息を引き取った。
加東大介にはその経験が…。
だからどうしてもやってみたい。
でも資材はどうする…。
パラシュート
それを床に敷き詰めたら、
積もった雪に見える。
え!使っちゃっていいの!
もう飛行機は無かったから…。
え!えぇええ!!

そうして、降る雪は紙だね。
上からハラハラと落とせばいいんだよね。
セットにも雪を積もらせて…
舞台は一面の銀世界…。
客席は歓声の渦!!怒涛の叫び声!!

ある日…いつものどよめきが聞こえない!
客席の300人は、両手で顔を覆って
静かに涙を流してた…。
観劇していたのは東北の部隊…。
この土地で死ぬ覚悟なんだもの…。
もう雪なんて見られるはずがない。
そう思っている人達なんだもの…。
故郷…恋しや…。
隊の将校の願いで、
歩けなくなった病人達が翌朝やってきて…。
ウ…ゥゥウ…。
ちょっと…目の前が…涙で…
本を読み返しながら、
時々、目頭を押さえながら、
これを書いてるんだけど…。
だってさぁあ、
舞台の上に積もってる紙の雪を、
栄養失調で動かない手で…。
愛しそうに撫でるんだよ…。
『南の島に雪が降る』
この言葉の重みが、
ズーン…っと心に響いたよ…。

地獄…だよね。
死んで当たり前なんだよね。
生きてることが奇跡なんだよね。
その中で異空間を作り上げる。
それがどんなに大変で、
どんなに大切で、
どんなに素晴らしいことなのか。

上演中も敵機の空襲は日常的っ。
その度に中断。
衣装のまま逃げて、暫くしたら
また舞台に上がる。
皆、必死で夢の世界に浸れる時間を
過ごしていたんだ…。

その発表があったのは
昭和20年8月15日から数日後。
負けたんだから芝居は終わり…。
じゃなかった!
いつ来るか判らない船を待ち続ける…。
その心の負担もキツイぃ。
だから演り続けるゾ!!
それにしても、
マノクワリにいた司令部の人達って、
人間心理を判ってるよねぇ。

昭和20年10月連合軍が上陸!
イギリス陸軍。前マノクワリのオランダ軍少佐。
インドネシアの下士官。パプアの兵士。
この人達も観覧することに!
こういう人達にも気を使ったりして…。
とにかくスッタモンダあるのに、
なんだか楽しそうに描がれているんだよ。

時代劇から現代劇へ。
レパートリーを増やすっ!
大尉の中に女物のデザイナーがいたっ。
その人が衣装を作ってくれることに!
軍の規律を守りながらも、
上下関係を保ちながらも一致団結!
どんどん充実するマノクワリ歌舞伎座!

ある日の上演中、復員船の知らせが!
客席中が歓喜の声!大地震みたいに揺れる!
幕の途中だけど、このまま演芸を修了する。
そう伝えた瞬間…
客席は凍ったように静まり返って…。
吼えるような…声にならない声が聞こえて…
「蛍の光」の大合唱へ!!…

昭和21年4月24日
演劇分隊「マノクワリ歌舞伎座」解散。

その後、次の船を待つ間も
なんだかんだあったんだねぇええ!!
詳しくは本を読んでぇ。

5月28日
全員が待望の船に乗った…。

生きて帰ってこれたからこその様々な人生…。
芝居に復帰した加東大介には
7千人の戦友が出来た!!
巡業先で色んな人に会う!
どこからともなく色んな物が送られてくる!
映画の世界への扉を開ける時、
背中を押したのが、
マノクワリを去る時に
「映画ならどこにいても会えるから、出て下さい」
そう言ってくれた皆の言葉…。

銃を持って敵と戦う。
そんな事が一度もない戦場があった…。
嘘みたいな本当の話…。
彼等は命を失うまいと、
人間らしさを無くすまいと、
必死に戦ったんだ…。
戦争体験記っていうから、
悲惨なことばかり書いてあるかと思ってたけど…。
泣いて、笑って、また泣いたぁあ。
ハッ。これって人情劇みたいだぁ。

終戦から70年の今年。
奇しくもこの本に出逢うなんて。
拙宅に書き残すことが出来るなんて。
上手くまとめられず、ダラダラ書いてしまって…。
読んで下さった皆様、有難うございました。
そして思ったこと
やっぱり戦争なんて二度としなくていいわい!!

この夏「南の島に雪が降る」舞台化!
しかも3つも!! 
前進座
南の島に雪が降る
全国巡演中
8月7日(金)~17(月):三越劇場
8月18日(火):武蔵野市民文化会館 

加東大介が前進座出身ってだけでも
スゴイことなのに、
加東本人に扮する嵐芳三郎は親戚! 

加東大介ゆかりの前進座、念願の初舞台化 

南の島に雪が降る
出演:柳家花緑、大和悠河
川崎麻世、松村雄基、柄本時生ほか
8月6日(木)~9日(日)東京:浅草公会堂
8月14日(金)~23日(日)名古屋:中日劇場
8月25日(火)福岡:キャナルシティ劇場
8月27日(木)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 

劇団アルファー
南の島に雪が降る
8月12日(水)~16(日)池袋シアターグリーン 

筑摩書房 
南の島に雪が降る(1961年東宝) 
岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』(1967年東宝)

誕生月だから本を買い捲るっっ (2015.3.30記)


4 コメント

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役者一家 (やたけたの熊)
2015-08-05 08:01:44
ニューギニア、インドネシア、フィリピン…。南方戦線に送られた兵士の死因の多くは餓死または飢餓で弱ったことによる病死。
20歳代の青年たちが、理科教室にあった人体模型のようの骨と皮ばかりになったそうです。
わたしの父も南方に送られるところでしたが、輸送船がつぎつぎと撃沈させられため、運よく逃れられたと生前に話していました。

お姉さんは沢村貞子、長門裕之、津川雅彦兄弟は甥っ子。ほんと役者一家ですねぇ。

兄の沢村国太郎は天才映画監督・山中貞雄の「丹下左膳余話・百万両の壺」で、平和な婿役をしています。のほほんとした役がなんとも言えません。わたしこの映画のDVD持ってます!
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加東さん (ごんごん)
2015-08-05 13:09:45
映画で見たことあります。ちなみリアルタイムではありませんよ。好い人役が似合うんですよね。昔歌舞伎役者していたとは知りませんでした。南の島の話は有名ですが、まだ本を読んだことがないので、早速買ってみます。戦争で生き残るっていうのはやっぱり、運と当人のモチベーションだと思います。
返信する
南方へ… (かしまし娘)
2015-08-05 17:01:07
やたけたの熊様
社会科の授業で近代史をじっくり教えてもらっていないので、
太平洋戦争も年号だけはなんとか覚えていますが、
細かいことは知っているようなそうでないような。
今回、歴史年表というヤツを見てみたら、
南方って多岐に渡っているんですね!!
グーグルマップで場所を確かめて慄きました!!
孤島もありました!
何千も何万もの人を送り込んで、挙句の果てに玉砕っ。

え!海を漂流されたのでしょうか。お父様は。
生きるも死ぬも紙一重…。よくぞご無事で。

丹下左膳といえば大河内傳次郎ですね!!
百万両の壺って私も観たことがあるような…。
DVDを持っていらっしゃるとは!アッパレじゃ!
沢村国太郎ですね。
いつか観る機会があればチェックします!
返信する
是非! (かしまし娘)
2015-08-05 17:05:34
ごんごん様
脇役ながらなんとなぁく印象に残る役者ですよね。
風体も個性的だし。

オオ!嬉しいです!
是非、読んでみて下さい。

たいがいが運かも…。
やわなモチベーションなら雲散霧消するような、
過酷な現実と直面するのではないでしょうか。
まして、精神的にも肉体的にもまともな訓練を受けていない
新兵なら尚更です。
せめて日頃から、色んなことを知って考えるってことが
大切かもしれませんね。
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