息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

慟哭

2014-07-04 10:38:09 | 著者名 な行
貫井徳郎 著

じっくりと物語が進む。
幼女誘拐殺人事件の捜査の息詰まる日々。
己の心の穴を埋めるために新興宗教にのめり込む男の日々。
交互に進む二つの話は、全く関係がなさそうであり、
時間の過ぎ方や物事の感じ方までも対照的だ。

そしてあまりにもじっくりと進むために、
そして私自身があまり興味をもてない雰囲気であったために
ある意味退屈であった。

しかし、最後の最後それはひっくり返った。
その意味が理解できたとき、そこにはどうにもできない
哀しさや虚しさがどっと押し寄せてきた。

人の哀しみのあり方はそれぞれに違う。
ましてや大切な娘を失ったときの喪失感は、表現しようの
ないものであるだろう。

幼い子供が巻き込まれた事件を発端に、さらなる大きな悲劇が生まれた。
タイトルは秀逸だ。
そしてこれが著者のデビュー作であることに驚きを隠せない。

夢違

2014-07-03 10:32:55 | 恩田陸
恩田陸 著

久々の恩田ワールド。
ずっと気になっていながら、ドラマ化映画化とかされてしまったものだから、
どうにも手が伸びなかった作品だ。
しかも原作とは大幅に違うっぽかったし。

しかし早く読めばよかった……。
すごく好みど真ん中!

予知夢を見ることができる古藤結衣子は、かつて大事故によって
死んだとされていた。
しかし、夢判断を職業とし、かつて結衣子の婚約者の弟であった
野田浩章は、その姿を目にしてしまう。
時を同じくして、説明のできない失踪事件が相次ぐ。

夢というものが価値をもち、それを読み取るシステムが確立され、
分析する夢判断が存在する社会。
そこにはまだ偏見があり、誤解があり、過度の期待がある。
そして有能な予知能力が必ずしも歓迎されないのは、いずこでも
そして今も昔も変わらない。

結衣子はそれらに追い込まれて姿を消したのではないか。
ではつぎつぎと怒る謎の事件は全く無関係なのか。
失踪した人々の中には、かなりの確率でかつて夢札を引いた……
夢のデータをとり分析を行った者がいることがわかり、
ますます事件は迷走していく。

八咫烏や和水仙、視界を奪う濃い霧。
そこに使われるモチーフは不思議と少しの怖さを秘めている。

最後の場面、法隆寺で結衣子と裕章は微笑みを交わす。
それは現実の世界のものなのか、時空を超えたものなのかは
はっきりしない。
それでもふたりのつながりの強さは伝わってくる。

西脇智代 かわいいアイデアBOOK

2014-07-02 10:18:21 | 著者名 な行
西脇智代 著

有名女優やタレントなどのスタイリングで知られる著者。
自身のブランドももっており、独自の世界観を展開している。

本書は、日々の暮らしの中で楽しくおしゃれに見せる、
アイデアや工夫が盛り込まれている。
また、若手クリエイターとその作品の紹介ページがあり、
著者の感性を刺激するつくり手の様子がのぞき見できるのも魅力。

可愛いものが好き、いくつになっても好き、という女性は多い。
でも見ていてイタくないように、それでいておしゃれにとなると
なかなかにハードルは高い。
だから、まず見ていて楽しいこんな本は嬉しいのだ。
パラパラとめくるだけで可愛いものを堪能できる。
そして、自分でも活用できる小さなアイデアが見つかればもっとうれしい。
センスがいい人って、特別なものでなくてもちょっとした着こなしで
すごく素敵に見せていたりするからなあ。

しかし、じっくり読み込む本ではないから、私にとってはやや高価。
これは借りて読んだのだが、買うとなるとためらうかなあ。

それでも「好きなものだけ」食べさせますか?

2014-07-01 10:52:31 | 著者名 た行
田中葉子 ほか 著

「食育」が言われて久しいが、平均的に見ると食事に関する問題は
年々大きくなっているのではないかと思う。

どんなに努力しても体はひとつしかないから、働く親は家にいる親より
食に注ぎ込む時間が少なくなるし、昔のようにゴミを庭や畑に埋めたり、
燃やしたりできず、住居のスペースも限られている以上、まるごとの魚や
野菜が避けられるのは仕方がない。
そして、何よりもすぐに食べられるものはとても簡単に手に入るのだ。
口当たりがよく、わかりやすい美味しさで、価格も手頃。
この誘惑に屈せず、食を守るのは教育と意識の高さしかないのだ。

ここで登場する食事のようすは、寒々しいものや驚くものも多いのだが、
それが必ずしも親の怠慢や祖父母の甘やかしというわけではない。
食べないと分かっていてもきちんと子供の食事を用意している家庭も多いし、
そこに並ぶ献立は全部食べるならば、理想的なものもある。
みんながそれを食べていた時代と違うのは、そこに子供が好きなものを
食べる、という選択肢があるということだ。

肥満や栄養失調などの問題は避けては通れない。
そこで、子供自身に知識をもたせること、食べ物が育ち口に入るまでの
過程を経験させることが提案されている。
肥満の子には運動の必要性も自覚させている。

どんどん栄養を必要としている成長期に、偏った食事をしてしまうことは
将来的に長く苦しい問題を抱えてしまうことに繋がる。
また、味覚や生活に刷り込まれた習慣は、普通の人ならなんでもないことを
大きな負担にさせてしまう。
そんな重荷を幼い子に背負わせるのはあまりに過酷だ。

生きることとは切り離せない食について改めて考えさせられた。