息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

殺意の赤い実

2014-07-28 10:15:32 | 著者名 さ行
櫻田啓 著

平家落人伝説をモチーフにした警察小説。
舞台が大分県で、知っている地名も多いので読みやすかった。

殺人事件なのだが、あまりドロドロした感じはなく、
大分・東京・能登の3箇所を丹念に調べつつ話が進む。
主人公の刑事・東山も、山岳救助隊志望だったというわりには
体育会系の雰囲気が少なく、むしろ細やかな視線でものごとを見る。

大分の平家山で殺されていたのは東京で働く時政京子。
彼女は平家山と同じ落人伝説がある能登ある地域の出身だった。
手に残された赤い南天の実に意味はあるのか。
なぜ無名な山に単独で登ろうとしていたのか。
そして彼女が働く会社の不正疑惑。
不思議な縁でつながる土地の伝説は、事件の背景を暴き出していく。

ややご都合主義な感じもあるが、伝説がうまく織り込まれていて
引き込まれていく。

それにしても落人伝説って多いのだなあ。
母方の実家もそんな感じの話があったなあ。山奥だったから。
なんだか赤い衣は身につけないとか、鯉のぼりはあげないとかいう
決まりごとのある土地もあったとか聞いたことがある。
どれだけ隠れて暮らしたのかと思うと切ない気もする。

事件解決よりもそんな伝説に思いを馳せてしまう一冊。