息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

逢はなくもあやし

2011-09-08 10:36:53 | 坂東眞砂子
坂東眞砂子 著

ほんのわずかな期間でもいっしょに暮らしたのに。
心が通じ合ったと思っていたのに。

旅に出ると言い残し行方をくらませた男の実家は、
奈良・橿原。
昔ながらの町並みを残すここは藤原京の跡地でもある。

寺の境内に、町の辻に、思念が残るというのはありそうな気がする。
何かわからないまでもふっと感じることがある。
ましてや古都だった土地、力をもった帝が眠っている地である。
女帝・持統天皇の想いを絡めながら進む物語はどこか雅でありながら、
主人公・香乃は今の時代を生きる女性のリアルそのものでもある。

奈良が舞台のせいか、『まひるの月を追いかけて』が思い浮かんだ。


香具山(かぐやま) 、畝傍山(かうねびやま) 、耳成山(みみなしやま) 。
古典の時間に目にしたことのある山たちには、恋ゆえの争いがあったという。
いつの時代もいくつかの恋があり、想いが交わされてきた。
物語の中にも時空を超えたものを感じる瞬間が描写されている。

いにしえを題材にし美しくまとまっているが、意外なほどにあっさりと主人公は
未来を見据える。
そして現代のリアリティを一番感じたのがここであった。


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