哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

「言葉の力を侮るなかれ」(『勝っても負けても』)

2009-11-03 15:35:35 | 
 前回の話に関連して、池田さんの言葉を少し紹介しよう。

 前回の話に近い池田さんの言葉は表題の項にある。以前「日めくり池田晶子」でも紹介したが、再録すると以下の通りである。


「人は言葉なしには生きてはゆけないのだから、言葉とは、すなわち命なのである。
 なのに現代人はすっかり思い上がっているから、人間が言葉を使っていると思い込んでいる。しかし逆である。言葉に逆上した人間が殺人を犯すとは、人間が言葉に使われているまぎれもない証拠である。」


 さらに同じ本の中に、言葉に関する別の項があるので、それも併せて紹介しよう。小説を書いてみようという若者が増えている、との報道があった頃の連載である。


「話し言葉とは、思っていることを口にすることである。口にする前によく考えることもあるが、たいていは書くよりは考えられていない。書くという過程は、思っていることをよく考えるという過程を、必然的に強いるのである。
 話すように書くとは、考えずに書くということと、ほぼ同じである。これで人は馬鹿にならずにすむものだろうか。
 人間とは考える動物である。思惟された形跡のない言葉は、動物の示威行動に等しいのではないだろうか。」(「小説を書こうかな」より抜粋)


 この文章は、携帯小説のようなメールのごとく書かれるような言葉に対してのものである。池田さんがインターネット上のブログに深い嫌悪感を持っていた理由もよくわかる。