哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『人生は愉快だ』(毎日新聞社)

2008-12-13 19:55:50 | 哲学
 先月出た、池田晶子さんの新刊である。「死んでからでも本は出る」と帯にあるが、何か挑戦的なもの言いである。「人生は愉快だ」という題名はどうだろう。池田晶子さん自身が考えていた題名なのだろうか。

 この本は、未発表の文章と、雑誌掲載の既発表文章をまとめたものとなっている。メインは未発表の部分(第1章 死を問う人々)であるが、これは古今東西の哲人・賢人・宗教創始者たちの「死に関する考え方」を論じている。各々の文章はさすが池田さんらしく、全くスタンスのぶれない論考は、本当に気持ちがよいくらいだ。どこかの書評で、池田さんの晩年は自らの死を意識してか、死に関する文章が多くなっていると書いてあったが、ここまで死を徹底して取り上げていたとは、その考えにうなづかざるを得ない気がする。

 これに対して、雑誌の人生相談(第2章 生を問う人々)の池田さんの文章はほほえましい。なかには「そのまま突っ走ってみたら如何でしょう」と、池田さんの呆れた表情が浮かびそうなものまである。きっとこの人生相談の連載については、結構池田さんに困難さを感じさせたことだろう。

 さて、トランスビューの連載だった第3章は、以前にも読んだことがあるので、目新しくはないのだが、一つ池田さんらしくない文章がある。そもそも犬の話になると池田さんは“らしさ”が失われやすいのだが、2匹目の犬を飼うことにした文章には「次の犬が往生する時、私は六十になる」というくだりがある。これを初めて読んだとき、「死は今そこにある」といつも言っている池田さんも、60歳まで生きるつもりで考えることもあるんだな、と不思議な感じがしたものだ。もちろん決して批判しているつもりではなく、ちょっとしたご愛嬌と思っているが。