哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

「たまたま」のこの人生(『暮らしの哲学』)

2007-07-08 20:00:00 | 哲学
 やっと『暮らしの哲学』を入手しました。サンデー毎日の連載はよくフォローしていなかったので、初めて読む文章もあります。表題の文章から少し紹介しましょう。格差社会においてセレブな暮らしをしているか、カースト社会の末端で飢えているか、いずれでもありえながら、たまたま自分は今ここに生きているという話です。


「なぜ自分はここに生まれて、あそこに生まれなかったということは、考えても、理由がない。理由が見つからない。ということは偶然である。したがって絶対である。自分の人生はこうであり、これ以外ではあり得なかった。こうわかっているなら、あとは黙って生きるだけだ。」


 今回の文章には、「偶然的なことが絶対的である」「絶対的ゆえに相対的」というような逆説的な言葉が何度も見られます。

 今ここに生きている自分は、他で生きていたかもしれない、という偶然。セレブでもカーストでも誰も彼も自分だったもしれない相対。そして今ここに生きている自分の絶対。

 これらが一つに繋がった末に、その結論は「普通に生きる」という、煙に巻くようでいて真っ当な、池田さんらしい言葉です。