哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『イスラーム文化』(岩波文庫)

2007-05-20 00:00:01 | 時事
 今回は、以前の話題に関連して宗教関係のお話にさせていただきます。

 イスラム教がどんなものなのか、なかなか仏教やキリスト教ほどにも知られていませんし、さすがに池田さんの本にもイスラムについてはあまり触れられていなかったと思います。
 そして報道を見れば、アフガニスタンの仏像爆破や過激派の自爆テロなど、イスラムが不寛容な宗教と思わされがちな情報が多いように思います。一方で、例えばエジプトにおいては各宗教が共存していて、祝いの日にはイスラム教の幹部が古代キリスト教系であるコプト教の教会に礼拝するなど、寛容な面もあったりします。

 一体イスラム教とはどんな宗教なのか。イスラム教について少しでも知っておくことは、人間の本質を考えることにも寄与するのではないかと思い、たまたま見つけた表題の本を呼んでみました。この本は講義録なので大変読みやすく、イスラム教とはどんな宗教なのかを手っ取り早く知るには大変良い本だと思います。


 読んでみて一番驚いたのは、イスラムの唯一神アラーはユダヤ教やキリスト教と全く同一の神であり、イスラム教においてもモーゼやイエスは預言者の一人だということです。つまり、ユダヤ教→キリスト教→イスラム教と、一本の流れを持った宗教なので、いわばユダヤ教やキリスト教の土台のうえにイスラム教が成り立っているわけです。実際に少しコーランを読んでみましたが、ユダヤ教やキリスト教の話が繰り返し出てきます。

 要するにイスラム教としては、せっかくモーゼやイエスに預言してやったのに、結局ユダヤ教徒やキリスト教徒は唯一神の預言にきちんと従わなかった。だから、イスラム教徒として唯一神アラーをに従うことが最も優れていることになる、というわけです。


 結局、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も、極論を言えば一つの宗教なのですね。これらの宗教同士の戦争も、同じ一つの宗教の中で争いをしていると言っていいのかも知れません。

 そうすると、同じ神を信仰する者同士いかなる理由で殺し合うのか、と池田さん風に言えてしまうのかも。