かたつむり・つれづれ

アズワンコミュニテイ暮らし みやちまさゆき

アレン・ネルソン

2017-05-10 10:28:43 | わがうちなるつれづれの記

        コトバを通して、その人そのものがズシンと伝わってくるときが

       あります。

 

「日本国憲法九条は、正義から生まれてきたというよりも、たくさんの

悲しみを通して生まれてきたもの」

「平和への道は無い、平和こそが道なんだ」

「第9条は日本人にのみ大切なのではありません。

 地球に住むすべての人間にとって大切なものなのです。

 アメリカにも九条があって欲しい。

 地球上のすべての国に、九条があって欲しい。

 世界平和はアメリカから始まるのではありません。

 国連から始まるのでもありません。

 ヨーロッパから始まるのでもありません。

 世界平和はここから、この部屋から、わたしたち一人一人から始まる

 のです」

 

アレン・ネルソンさん。

1947年、黒人の母から、私生児として生まれました

18歳のとき、アメリカ軍海兵隊に入隊。

その後、13ヶ月、ベトナム戦争に送り込まれました。

とっても怖かった人を殺すということが、何でもない日常のことになって

いきました。

ところが、あるときベトコンの不意打ちに会い、とっさに近くの穴に飛び

込むと、そこで人が産まれる瞬間に、偶然、立ち会うということになった

のでした。

「自分も母の、そんな苦しみの中から産まれてきたんだ」と我に返ったと

いいます。

ベトナムから帰国して、戦場の悪夢に苛まれます。

家族と暮せなくなり、ホームレスの暮らしになっていきました。

そんなとき、中学時代の同級生で、小学校の教師をしている友人が

「子どもたちに、ベトナムの体験を話してほしい」と頼まれました。

ネルソンさんは、あたりさわりのない話をしました。そのあと、子どもた

ちの質問タイムがありました。

    いちばん最後の質問。

「ネルソンさんは、人を殺したことがありますか?」

ネルソンさんは、絶句します。

「人を殺した、なんて言えば、殺人者として子どもたちから気嫌いされて

しまう」

 どのくらい沈黙があっただろう、

 ネルソンさんは、戦争の体験を語りました。

 聞いていた子どもたちが、「かわいそうなネルソン!」と教室中で泣き

はじめたといいます。

 

 ネルソンさんは、戦争体験を語る活動をしはじめました。

1997年、来日したとき日本国憲法9条に出会いました。

 ネルソンさんの衝撃。

「第九条を読んだ時、自分の目を疑いました。

あまりに力強く、あまりに素晴らしかったからです。

日本国憲法第九条は、いかなる核兵器よりも強力であり、いかなる国の

いかなる軍隊よりも強力なのです。

日本各地で多くの学校を訪れますが、子どもたちの顔に、とても素晴らし

美しくかけがえのないものが私には見えます。

子どもたちの表情から、戦争を知らないことがわかるのです。

それこそが第九条の持つ力です。

日本のみなさんは、憲法に九条があることの幸せに、気づくべきだと

思います」

 

  何回も日本国憲法の前文や、9条について、これまでも読んできました

が、ネルソンさんのような反応に、ハタと読みには深さがあるんだなあと

実感しました。

 どんな憲法がいいとか、こんな風に変えたらいいとか、いや今のままで

いいとか、さまざまな意見が政界、学会、庶民の間であります。

 その意見のはじまりが、何にもとずいているか、ふだん、そんなこと気に

もせず過ごしていますが、ネルソンさんの気持ちを聞いて、立ち止まらな

わけにはいきませんでした。

 ネルソンさんには、人間というものについての深い洞察が根底にあるよ

うに感じます。

 その洞察が、9条と出会って、9条を生き生きと蘇らせたと思います。

アリはアリらしく、象は象らしく、バクテリアはバクテリアらしく他との

関連のなかで暮しています。

 人間も、他との関連で、人間らしく生きたいです。

 争いや、戦争は間違いだと思います。

 

 人間らしい当たり前の暮らしこそ、かけがえの無いもの、幸福そのも

の、その人間についての捉え方がどうなっているか、振り返りながら、暮

していきたいです。

 幸福は、人間の知性によって、実現していくのではないでしょうか。

 

 ネルソンさんのテレビを見ました。

日本で、9条が変えられていきそうなのをとても悲しんでいました。

彼の表情や目のまなざし、慈悲に満ちているようで、内面の豊かさや

知性のひらめきが、ぼくには感じられました。

 

 ああ、何で敵をわざわざつくって騒ぎ立て、莫大なお金を使って、

軍備を用意し、はては、武器を諸外国にも売りつけようというのです。

いまは、政府やメデイアの流す情報が、ただその人たちがそのように受け

取ったというだけなのに、ぼくらは、ついつい、それについて、またまた

自分の反応を乗っけて、大騒ぎ、外側だけでなく、内面でも忙しく、

大騒ぎしていないかなあ、とふりかえるのです。

 

 

 

 ネルソンさんは2007年、この世を去りました。61歳でした。

癌でした。ベトナム戦争で浴びた枯葉剤の影響とも言われています。

 

 (ぼくは、彼と同じ年に生まれました。18歳のときは、大学に進んでい

した。

ベトナム戦争は、変だ、違うと感じたので、反対の意思表示をしました。

そのころ、ネルソンさんのような体験があったわけです。

自分の兄弟がベトナムに行き、帰ってきたという幻想につつまれていま

す)

 

 

 

 

 

 

 

 


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