花山の思い 12番札所(水上はいづこ)

 都に都があったころ、都に近い海のように大きな琵琶湖がある地域を「近江」といい、遠くにあった静岡県の浜名湖のある地域を「遠州」と言った。

 西国観音霊場で、琵琶湖のそばにある12番札所は岩間寺(いわまでら)。

 お寺というのは、修行の地でもあり、僧侶が生活をする場でもありますから、当然近くに水がないとアウト。
岩の隙間から湧き出る水が池に流れ込みまんまんと水をたたえる。そこに松の葉をシャーッと音を立てて吹き抜けた風が波をたてる……

 花山法皇は、満々と湛えた豊かな水を観音さまの豊かな慈悲と見ただろうか。
 その慈悲の源はどこにあるのかと思いを馳せただろうか。
 松風の音の中に仏の説法を聞き、
 岸打つ波に、観音さまの慈悲のが絶え間なく打ち寄せる幻影を見たか。

  水上(みなかみ)は いづこなるらん 岩間寺 岸打つ波は 松風の音

「松風談般若」(しょうふうだんはんにゃ)という言葉がある。細く密集した松の葉を通る時にしか聞こえない不思議な風の音は、仏が般若(智恵)を説法しているのだと聞くのである。
 赤ちゃんの泣き声を命の雄叫びと聞くのと似ている。

 仏の慈悲の源は、じつはあなたの心の中にあるということでもある。じっくりと、そして確実に流れて出し、徐々に豊満なやさしさが湛えられていく。西国観音巡拝も行程の三分の一を過ぎて、花山法皇にそんな思いがあったのだろうか。
 琵琶湖の水にも思いを馳せたことだろう。

 水上はどこか、言ってごらんの「言う」を「岩間」にかけてあるご詠歌だ。

 さて、次回は13番石山寺、私も大好きなお寺である。
 西国霊場ホームページ⇒http://www.saikoku33.gr.jp/
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