「使い分け大変でしょう」

 この一カ月の間、初対面の方と話をして、三人の方から、いくらか気心が知れてきた頃にこんな質問を投げかけられた。
「お坊さんの時と今のような時とで、使い分けをするの、大変じゃないですか?」
「はっ?」である。私は使い分けなどしていないのだ。

 相手の方は、坊さんがこんなに気さくな筈はない、もっと真面目で、真摯な態度の筈である。だから、きっと今は、プライベートな時間なのだな……と思っているらしい。

 私はお坊さんとしてお経を読んでいる時だって、衣を着て法話している時だって、家族とご飯を食べている時だって、初対面の方とお酒を飲んでいる時だって、まったく使い分けはしていません。

 表と裏の顔(?)を使い分けするほど器用でないし、ありのままの私でいいし、そのありのままの自分をいくらかでも磨いていければいいと思っているのです。もちろん、TPOは考えていますが、「本日は公私ともどもご多忙の中をご参加いただきまして……」とは言いません。「今日はお忙しいところをお越しいただきまして」と普通に言います。
「作るな、気取るな、偉ぶるな」--これはお世話になった村上正行アナから聞いた話し方の極意ですが、私にとってこの言葉は人生の極意だと思っていて、なるべく実行しようと思っています。

 営業マンや店員さんとして、二つの顔を使い分けている方は、定年になったら使い分けをしない楽な生活をしたいと思う方がいるようですが、そんなものは定年なんか関係ありゃしません。今からやって、楽に仕事やプライベートを楽しめばいいと思うんです。
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