『悟浄出世』-神知を有する魔物の巻-

 女禹のかつて識(し)っていた魔物は、上は星辰(せいしん)の運行から、下は微生物の生死に至るまで、深甚微妙な計算によって、既往のあらゆる出来事をさかのぼって知りうると共に、将来起こるべき全ての出来事をも推知することができるのであった。

 ところが、この魔物は大変不幸だった。というのは、この魔物がある時ふと、

――自分の予見しうる全世界の出来事が何故に(経過的ないかにしてでなく、根本的な何故に)そのごとく起こらねばならぬかということに想達し、その究極の理由が、彼の計算でもついに探し出せないことを見出したからである。

 ヒマワリは何故黄色いか。何故草は緑か。何故すべてがかく在るか――この疑問が、この神通力広大な魔物を苦しめ悩ませ、ついに惨めな死まで導いたのであった。

   ※     ※     ※
 いやあ、面白いですね。「わいからないことをわからんとしておく勇気」が持てなかった魔物の話……。
 さて、つぎに女禹が話した妖怪は、小さく見すぼらしい魔物の思い出……。しかしその魔物の一生は幸福だったといいます。どんな魔物だったのでしょう。
 それはまた次回のお楽しみ。

   ※     ※     ※
 今日は、ご詠歌のダブルヘッダー。思わず、昨日のラリーとトレーシーの話に熱が入って、時間が延長になってしまいます。そう言えば『悟浄出世』は、自閉症の彼らが今回の旅をして、坊さんやら、いろいろ人に出合っていく旅の映画『ロード・トゥ・うどん』(仮題)と似ています。
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コメント
 
 
 
「明日晴れるかな?」 (buaisou)
2009-05-21 21:53:07
毎日の天候って、人の心の在りよう人生に似ていますよね。その人の心の中が常にどの天候にあるかによって、変化した時の「天候に」関する思いも違うし、受け止め方もまちまちですよね。和尚が表現するように、雨の日は「お気に入りの傘」や、子供にすれば「買って貰ったばかりの長靴がやっと試せる事が出来てうれしい!」、「お湿りがあって有り難い!」などと。でも、心の中が「全天候対応型」なら、詰らない思いは何もありませんよね。

大好きな「桑田さんを紹介させて頂いてもいいですか?」和尚の本の内容を思い出させてくれた「歌詞」だったもので。すみません。http://www.youtube.com/watch?v=KMkRchJXt94
 
 
 
いい歌ですね。 (和尚)
2009-05-22 13:11:23
 どこかでは聞いていた曲ですが、やはりこうして歌詞を読みながら聞くと、ずっといい。歌詞カードを見ながら、レコードを聞いていたころは、一曲一曲が心にすーっと入ってきてましたっけ。
 素敵な動画のご紹介、ありがとうございました。家内が桑田ファンで、パソコンの前に棒立ちになって聞き入って、見入っていました。「これって、どうやったら見られるの?」と無邪気な質問をされました。わはははは。
 
 
 
ざっくりしすぎ・・・  (ごんべいどう)
2009-05-22 13:19:51
 『ロード・トゥ・うどん』―→うどんって食べるうどんの事ですか?

 天気が雨だろうと、嵐だろうと、雷だろうと、曇りだろうと、必ず雲の上にはサンサンと輝く太陽があります(みんな平等にね)。心の中の天気が晴れじゃなくても、私の心の中には、いつも太陽があると思っています。
 心の中が曇りの日は、「あ~太陽が顔を出したがってるよ~」なんて自分に言ったりしてる。
 すべてが空なうえ心の中の天気も空だから自分で太陽作っちゃいました。空の教え間違って解釈してますか?

 
 
 
うん、あってる。 (和尚)
2009-05-22 14:47:23
ごんべいどうさん> 太陽作っちゃえ作戦、お見事です。それができるようになったら、今度は、曇りの日の雲も楽しめるようになれるでしょう (v^ー゜)。
 
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