宅急便とバナナ

 この時期、宅急便屋さんは猛烈に忙しそうです。

 午前10時に荷物を二つお願いするために電話をしました。

 いつもの明るい宅急便屋さんが来たのは午後6時を回っていました。

 「お待たせしてすみませ~ん」
 「その調子では、夕飯を食べる暇もないんでしょう。バナナ持っていきなせぇ」
 「うはっ!そうやって、人の心がよ~く分かる人だから、住職になれるんですねぇ。ありがとうございます。喜んでいただきます」

 気持のいい会話でした。

 私は彼のように働いていません。実際彼が寺に来た時には、私は夕飯を食べていたところでした。私が夕飯食べている時に、誰かから誰かへの心のこもった荷物を運んでいる彼がいます。
 私が仕事をしている時に彼は休んでいるかもしれませんが、そこには「お互いさまだからねぇ」では片づかない何かもっと別の気持がありました。

「比べて悲しむと自己を失う。比べて喜ぶと他を傷つける」--そんな言葉が脳裏を過(よぎ)る冬の宵です。
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