申し渡す辛さ。

およそ斯道の大家であれば、後進が充分に育っていても、その組織に関わっていたいと思うものだ。自分がその組織を大きくしたという自負もあれば、自ら引き際を察するのは難しい。しかし、年を重ねれば、身だしなみも一人で整えられなくなる。剃り残しの長い髭などが数本喉の辺りにヒョロヒョロと生えているのを見れば、世話になった者としていたたまれなさと切なさが交錯した気持ちになる。誰かが言上しなければ、いわゆる“世間に老醜を晒す”ことになる。嫌な役だが「あなたしかいないでしょ」と言われた。申しあげねばならなかった……、できれば、迎えたくない今日だった。

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