風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

春節

2019-02-05 23:16:01 | 日々の生活
 今日は、いわゆる旧正月、Chinese New Yearで、マレーシア(ペナン島)駐在時代の同窓会名簿化しているfacebookには、多くの写真やお祝いのメッセージが寄せられていた。中国本土では民族大移動の季節だが、今年は景気が後退しているため、工場閉鎖などのあおりを食らって、片道切符の人が多いのではないかと噂されている。
 初めにことわっておくと、マレーシアでは一般にマレー系住民が三分の二を占め、華人(移民して土着した中国人)は二割程度、残りがインド系で一割程度なのだが、ペナン島では何故か華人が三分の二を占め、マレーシアの他地域とは雰囲気が異なり、例えば運転マナーは頗るよろしくない(笑)。
 そのペナン島駐在の頃、取引銀行などが主催する、春節を祝うディナーにお呼ばれすると、Yee Sangという前菜料理を、テーブルを囲む皆が箸で一斉に勢いよく掻き混ぜては箸を高く突きあげ(toss & mixと言う)、口々に新年の幸運を祈る言葉をかけ合う、不思議な習慣に遭遇する(上の写真は、掻き混ぜる前・中・後のあられもない姿)。Yee Sangというのは生魚のサラダのことで、生鮭のことが多いが、白身の得体の知れない魚のこともあれば、海藻やクラゲや、時には鮑のこともあるらしい(が、残念ながら高級な鮑には出会ったことがない)。刻み野菜(大根、玉葱、人参、マンゴーなど)や、細く刻んだ芋か米粉を赤(紅生姜)や緑(?)に色づけ(味付け)して揚げたものの上に、その生魚の切り身を載せ、ソース(プラムソース、米酢、キンカンのペースト、ごま油、蜂蜜、ライムジュース等)や薬味(チリ、ピクルス、韮ねぎ、ピーナッツ等)を散らせる。これがまた、華人好みの派手な色あいで、作法は新年を祝うに威勢がよく、実に賑々しいものだ。
 中国本土や香港や台湾では余り見ない習慣で、聞くところによるとマレーシアやシンガポールに特有なのではないかという話だったが、当時、Wikipediaで調べてみたら、広州(潮州方面)の海岸沿いの漁師の間で、新年の7日目を祝う行事として始まったもので、南宋の時代にまで遡るらしい。それがマレー半島に移民とともにもたらされたというわけだ。移民の間で民族的同一性を確認するささやかな行事として、しぶとく生き残っているのだろう。移民社会には、こうした習慣や文化が、飛び地のように伝播して、案外、本国では廃れてしまったものもある。ヒンズー教徒(インド系)の間に残るタイプーサムという行事もその一つで、舌に銀の串を刺したり、顔や体に針などを刺したりして、半円形の「カヴァディ」と呼ばれる神輿のような飾りを担いで練り歩く、一種の奇祭で、余りに壮絶なので本国では禁止されたと言われるが、マレーシアやシンガポールには何故かしぶとく生き残っている。移民社会ならでは、なのだろうと想像するが、そんな移民の求心力ともなり得る文化のもつ不思議だろう。
 この季節になると、こうした、どうでもいいようなことをふと思い出す。今頃、toss & mixをしながら、賑やかに食事しているのだろうか。なにはともあれ、Happy Chinese New Year!
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