風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ニュース性のないニュース

2011-09-03 03:25:18 | 日々の生活
 最近、こんなことまでニュースで取り上げられるなんて!?と疑問に思うことが多くなりました。NHKやまともな総合紙までもがワイドショー化していると、かつて別のブログで嘆いたことがありますが、その延長上にあると思われるのが、数日前、宇宙飛行士・山崎直子さんが行った宇宙飛行士引退記者会見についての報道です。宇宙飛行士を引退することは本人の勝手ですが、宇宙飛行士って、そんなことをわざわざ記者会見まで開いて世間に披露するような職業だったのか? 山崎さんを非難するつもりはありません。何か別の狙いがあるなら良いのですが、なんだか自分の価値観に自信がなくなるようなニュースでした。
 ある雑誌で、池上彰さんが、かれこれ30年前、NHKで警視庁捜査一課担当(つまり殺人事件専門の記者)だった頃のことを語って、当時は、特殊な例を除き、殺人事件は、2~3人まとめて殺されるような事件でない限り、全国ニュースにはまずならなかった、例えば北海道で起きた殺人事件は北海道のローカル・ニュースどまりだったと述懐されていました。ところが最近は、殺人事件数は減っているのに殺人事件報道が増えているのは、現在、民放を中心に、ニュース番組の時間枠がどんどん拡大しており、芸能人を起用したコストのかかる番組の代わりに、殺人事件の取材報道はマスコミにとって一番楽で、予算のわりに視聴率が見込める理由からだと解説しています。報道記者やニュースに強いディレクターが増えるわけではない、そんな時、殺人事件報道ほど、注目を集めやすく、かつ取材が楽なものはない、事件の概要は警察が全部発表してくれるし、容疑者や被害者の写真も貰える、カメラマンを現場に出せば、とりあえず現場の映像が撮れる、マイクを向ければ、近所の人は「怖いですね」と言ってくれる、あっという間に5~6分の報道が一丁上がり、というわけです。また、警察の方も、殺人事件は過去最低、といったことは誇りにはなるけれど、警察白書の中にさりげなく書かれるだけでよくて、むしろ治安がいいならば警官の数も少なくていいのではと言われたくないので、大きく報道されない方がいい、却って殺人事件報道が増えた方が自らの組織の存在意義や警察官増員計画を正当化できて好都合だ、などと穿った見方もされています。
 調べてみたら、確かに、2010年に発生した殺人事件(未遂も含む殺人認知件数)は1067件で、戦後最少を2年連続で更新しました。1954~55年には3000件を越えていたのに、その後漸減し、終戦直前の1944~45年に記録した939件や919件に迫る勢いです(昭和初期は2000~2500件)。因みに交通事故死者数も、2010年は4863人で、10年連続減少しています。ところが自殺者数はここ10年強の間、年間3万人レベルで高止まりしていて、日本の社会のある側面を物語るようです。
 さて、殺人事件に話を戻すと、ちょっと古いデータですがICPO調査(2002年)によると、人口10万人あたりの発生率で、日本は1.10件と、先進国の中ではアイルランドと並んで最も低いとされています。因みにスウェーデン約2件、ドイツ約3件、イタリア・フランス・オーストラリア3.6~3.7件レベル、アメリカ5.6件、イギリス・スイス18.5件、ロシア22.2件となっていて、日本は十分に誇って良い。何だか最近いよいよ強まっている日本人の潔癖症のせいか、日本ではちょっとした殺人事件まで全国ニュースで取り上げられるようになって、統計値とかけ離れたあるムードを形成していて、これも日本を元気にさせていない原因の一つになっているように思います。ニュースの扱いや受け止め方は、ワイドーショー化して楽しむ分には良いですが、場合によっては注意が必要です。
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