風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

移民大国・アメリカ

2015-05-16 11:11:26 | 時事放談
 前回、アメリカがキューバに歩み寄ることになった背景を、主に外政面から触れました。内政面でもいろいろ思惑があるようです。
 産経Webは、「フロリダ州をはじめ米国内には、キューバからの亡命者と難民が押し寄せ続けてきた経緯」があり、これは「キューバにおける人権侵害がもたらしたものにほかならず、オバマ大統領には、関係改善を図る中で人権尊重など『体制の変革』を少しでも促す狙いもありそうだ」と書きます。キューバとの関係改善を目指すのであれば、当然のことながら、社会主義国・キューバの体制に多かれ少なかれ変革がもたらされるであろうことは予想されるところです。この文脈では、どちらかと言うと外政面寄りの話と言えますが、アメリカで持ち上がっている移民問題に関連し、オバマ大統領は、今後、増え続けるキューバとはじめとするプエルトリカンを率先してアメリカに移民として受け入れることにより、アメリカ内の「宥和」を測ることを目指しているのではないかとする見方もあります(川上高司氏による)。しかも民主党は、各州でヒスパニック系住民の圧倒的支持を得ていて、移民が増えればそれだけ民主党が有利になることを見込んだ政策であるとも見られているようです(同氏)。共和党が、オバマ政権(民主党)のキューバとの国交正常化交渉に警戒し反対を表明するのは、このあたりも関係しているのかも知れません。
 実際のところ、アメリカの国力の源泉は、増え続ける人口そのもの、しかも、増えているのは主にヒスパニック系で、常に低所得層が流入するという、かつて西欧諸国が中南米やアジア・アフリカで植民地を搾取した構造をアメリカ社会に内在させていること、そして、そんな低所得層がそのままに留まるのではなく、より上位を目指す自由な社会のダイナミズムにあると思っています。
 しかし現実には、そう単純に割り切れるものではなく、全人口に占める白人の比重は低下するばかりであり、10年ほど前のデータでは、白人1.96億人(全体の7割)レベルでしたが、出生率が低く、2050年になっても2.1億人、比率は50%まで下がると予想されています。当然、宗教的に見てもWASPの国ではなくなり、ヒスパニック系が増えれば、ローマカトリック教会(現在28%)が増え、プロテスタント諸派(現在55%)の地位が相対的に下がることもまた容易に想像されます。
 ヨーロッパでも移民問題はホットで、国民国家のありようが揺れています。2050年以降、白人が過半数を割り込むアメリカは、内政的に、とりわけ多文化主義的な社会がどのように変容していくのか、他方、外政的にはどんなカタチをとっていくことになるのか、日本としても他人事ではありません。
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