風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

厄介な隣人たち・・・中国と韓国

2012-05-12 22:33:07 | たまに文学・歴史・芸術も
 読後感と言わず、読みながら胸糞悪い思いをすること請け合いの本を紹介します(笑)。「日中韓 歴史大論争」(文春新書 2010年10月)、ブックオフで衝動買いした一冊です。櫻井良子さんと田久保忠衛さんという二人の保守派の論客が、中国人学者や韓国人ジャーナリストを相手に行った歴史問題を巡る座談会(月刊誌「文芸春秋」掲載)を再録したもので、なかなか刺激的です。まともな討論にならないだろうことは、私でも端から想像できますが、実際に読み進めていくと、すれ違いばかりで欲求不満が募ります(笑)。
 実際、登場人物の一人で中国社会科学院近代史研究所所長は、歴史は三つのレベルに分けて考えることが出来る、一番上は歴史観、次が歴史認識、そしてそれらのベースにあるのが歴史の事実で、いきなり歴史観や歴史認識について一致を見ようとしても、現状ではそれは不可能、しかしお互いの歴史の事実を共有することは、両国の努力によって可能ではないか、などと、フレームワークについては結構まともなことを言って期待させますが、現に彼(だけでなく党・政府や息のかかった関係者)がやっていることは、中国共産党公認の歴史観ありきで、それに合う都合の良い歴史的事実ばかりを拾って、およそ公平な態度とは言えません。日本の国の在り方に対しても、ガチガチの東京裁判史観をベースに村山談話や河野談話といった、およそ良識ある多くの日本人なら眉をひそめたくなるような自虐的な対応を当然のものとなし、日本の知識人の在り方に対しても、丸山真男さんや大江健三郎さんといった、中国人に都合が良い進歩的知識人(その多くは日本人でありながら反日的です)を器用に選り分けてつまみ食いし、却ってよく日本のことを勉強していることに感心させられるほどです。かたや櫻井さんや田久保さんをはじめ、一般の日本人は、虚心坦懐に歴史的事実を眺め、その積み重ねの上に自由な歴史認識と公平な歴史観を形成しようとしますので、日中双方が交わることはなく、いつまでたっても平行線です。
 例えばそんな中国側の二枚舌は、教科書を巡る問題でも露呈します。日本側が、中国の反日教育を指摘すると、中国側は、反日本帝国主義ではあっても、現代の日本という国や日本人という国民に対する感情とは別だとしゃあしゃあと答える。それなら何故、中国の中学生用歴史教科書で日露戦争を教えないのかと事実を指摘すると、都合が悪いことには答えないで頬っかむり。しまいには中国側は、中国のモンゴルやウィグルやチベット問題は「国内問題」だと主張しながら、日本の靖国問題や教科書問題は日本の「国内問題」ではなく、「国際関心事」にあたり、外交問題であって、中国が発言することは何ら内政干渉にあたらないと、ぬけぬけと答えて、中華思想の一端をはしなくも垣間見させます。
 それでは韓国はどうかと言うと、韓国側は、韓国における民主主義はマスコミにもしっかり根付いており、必ず反対意見が存在する、だから中国式の反日とは全く別のものだ、と主張しますが、似たり寄ったりのようです。最終章で、櫻井さん・田久保さんの二人と対談する、日韓歴史共同研究のメンバーだった古田博司さん(筑波大教授)が、日本だけでなく、満州やモンゴルやウィグルやチベットなど周辺国は皆、中国から受けた被害に対して異議を唱えてきた歴史があるのに、韓国は違う、原因は中華思想の影響を受けているから、中国による華夷秩序に完全に組み込まれ、中国の威を借る狐になった、「小中華」であり「事大」、つまり中国の威を借ると同時に、「大」である中国につかえる冊封体制の一員という位置づけだったから、と解説します。古来、日本海によって隔てられ、ある距離を保つことが出来た日本と違って、地続きの朝鮮半島は、中国との間に独特の緊張関係を余儀なくされ、何等かのコンプレックスを抱いて来ました。それを古田さんは「助け、裏切り、恨まず」の関係だと形容し、櫻井さんはそれを受けて肉親同士のようだと答えました。これまでまがりなりにもアメリカ陣営に属して来た韓国は、今後、北東アジアでプレゼンスを増し経済的結びつきを増す中国に、再び近づくのではないかという観測もあります(日経・鈴置高史氏など)。
 こうして見ると、1998年に当時の国家主席だった江沢民が「日本には歴史問題を永遠に言い続けなければならない」と在外公館大使に指示していたことが、2006年に公刊された「江沢民文選」で明らかになったように、中国・韓国側に問題があるばかりではなく、日本国内にも獅子身中の虫、すなわち左翼系オピニオンリーダーやリベラルと目される進歩的知識人が、中・韓に言質を与えるような反日的な発言を繰り返し、結果として日本の国を貶めて来たことが分かります。もしかしたら、彼らは意識しない内に中国に操られていたのかも知れません。中国にも伝統的に目に見える武力一辺倒ではなく(とりわけ武力で劣る時には)心を占領しようとする契機があります。梅棹忠夫さんをして、日本は中国などのアジアよりも欧州に近いと言わしめた、一番身近な隣人でありながら、厄介で遠い存在である中国や韓国の立ち居振る舞いについて、私のようなノンポリ人間にも、いろいろな示唆を与えてくれる好著だと思います。
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