風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

日韓貿易戦争?

2019-07-06 14:39:19 | 時事放談
 韓国に対する日本の輸出規制強化に、韓国から感情的な反発があがったのは予想通りだった。一般大衆の中でも一部の過激な方々の反発はともかくとして、韓国メディアの、「稚拙な報復措置を即刻、撤回すべき」(ハンギョレ紙社説)、「偏狭で度量が小さい」「狭量」「信頼を破壊する不当で稚拙な行為」(中央日報)といった恨み辛みは相変わらずで、およそ西欧の国家関係であれば使われるに相応しくない「稚拙」な表現に見える(苦笑)。「韓国バッシングを支持率上昇に利用していると疑われてきた安倍政権が、21日に実施される参院選を意識して幼稚な手法を使ったとの指摘もある」(東亜日報)とまで言われると、自意識過剰もほどほどにと、いかり肩をぽんぽんと叩きたくなる。400年近く前のことではあるが「国家における領土権、領土内の法的主権および主権国家による相互内政不可侵の原理が確立され、近代外交および現代国際法の根本原則が確立された」(Wikipedia)とされるウェストファリア体制下に今もあると、日本は思っているが、お隣の国は、地域のこと(中国や日本相手)になると、儒教思想に裏打ちされた華夷秩序が優先するらしい。
 日本のメディアが「報復措置」と書きたてたことの反映でもあろう。しかし問題を日韓の間の「報復措置」に矮小化すべきではない。「ホワイト国」を安全保障上の友好国と定義し、韓国を除外したとセンセーショナルに(!?)騒いだが、法制度はそんな曖昧な運用は許されない。あくまで4つの国際レジームに参加し、輸出管理を適切に運用していることが確認されるという実務の要件を満たす必要があり、世耕経産大臣自らもツイッターで解説に乗り出さざるを得なくなったが、もしそうだとするならば、朝鮮半島の緊張がなかなか解けない現下で深刻な話である。こうしてメディアによる言説は安易に引用され、あるいはこだまするもので、日→韓→米と伝わって、ウォールストリート・ジャーナル紙が「日本はルールに基づく多国間システムの最も信頼できる支持者だったが、それに背を向けようとしている」と言及したことには注意を要するだろう。「脱亜」を言うつもりはないが、日本は常に西欧的な価値観とともにあった方がよいと思うからだ。もっとも一般論として、欧米の主要紙にしても、例えば中国系・韓国系アメリカ人が書く記事の中には、必ずしも高級紙にふさわしくない偏向したものも見られるようになっているところは割り引いて見る必要があるのだが(この記事を誰が書いたのか知らない)。
 今回、ちょっと注目していたのは文在寅大統領の反応だったが、殆ど無反応だったようだ(苦笑)。「日本のメディアを通じて日本政府の規制措置が韓国に伝えられると、韓国経済界と関連省庁が事実関係の確認に右往左往していた」(産経電子版)ようだが、大統領府は公式コメントを発表することなく、青瓦台関係者は「産業通商資源部など関係部処が対応するだろう」と語ったという。そして翌7月1日、大統領は予定通り休暇を取り、その翌2日、大統領府で開かれた閣議では、大統領が会議場に登場するや、出席者全員から大きな拍手で迎えられ、閣議冒頭の発言の全てを6月30日に行われた「板門店米朝首脳会談」に割いて、日本の輸出規制と日韓関係については一切言及しなかったそうだ。大統領府関係者の説明によれば「戦略的沈黙」だと、毎日経済新聞が伝えている。日本の政府関係者が韓国への対応を「戦略的放置」と呼んでいることが伝えられたことへの意趣返しであろうか。それでも日本政府は最低限の反応はして外交的配慮を見せているが、無反応とは何とも「稚拙」だ(笑)。
 韓国人作家の崔碩栄氏は韓国側の反応について、「一般の人たちの最初の反応は、日本が本気で怒ったことに“驚いた”というのが正直なところ。(韓国国内へのTHAADミサイル配備をめぐり韓国企業を中国から締め出し、韓国への旅行を禁じるなどの報復措置をとった)中国と違い、日本から抗議はされても最後は“仲良く未来志向で”などとうやむやになるのが通例でしたから。今は日本に対する怒りと韓国政府の無策に対する怒りが半々といったところです」と語っている。韓国メディアの反応も日本批判一色ではなく、「対韓輸出規制:関係悪化招いた韓国大統領府、尻拭いは担当省庁に押し付け」(朝鮮日報日本語版)、「文大統領、自画自賛する時間に対策を出すべき」(中央日報日本語版)と、政権の無策を批判するものも出るには出ている。
 ある朝鮮半島研究者は、考えあぐねた末、大統領が国益が分かっていない(プライオリティ付けが出来ない)ことが問題だと、遠慮がちに批判していたが、ずばり適格性の問題で、同じ市民運動家あがりで、イデオロギー偏向もあって言葉巧みに政権の個別政策批判は出来ても政治的調整の行動は出来なかった菅直人状態ではないかと、秘かに危惧している。
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