風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アメリカ大統領選の行方

2020-10-13 00:03:16 | 時事放談
 トランプ大統領が入院したのは10月2日のことで、僅か3日間で退院したのも驚きなら、7日には執務を開始したのも驚いた。彼の過去4年間の言動から、それほど外れてはいないのだろうけれども、私のような凡人には今なお驚きの連続である(笑)。もともと彼の精神状態(mental state)を不安視する見方があったが、治療のためステロイドを投与されたため、判断力に支障を来す副作用が出ているのではないかと取り沙汰され、またぞろ精神不安定(mental instability)を含む職務遂行不能状態を理由とする大統領罷免を規定した憲法修正第25条の適用が議論され、大統領の精神状態と統治能力に関する特別調査委員会を立ち上げる動きにまで発展した。相変わらずのお騒がせ振りだ。
 結局、2回目のテレビ討論会は、トランプ氏がWeb開催を嫌ったため、残念ながら中止となったが、まあ、趨勢にはそれほど影響しないと判断したのだろうか。そうは言ってもトランプ大統領夫妻をはじめ30数名の感染が伝えられ、ホワイトハウスが一大クラスターと化するという、トランプ大統領の大胆極まりない、周辺スタッフには迷惑この上ない行動からは、焦りが見えると一般に解説される。確かに、CNNなどの左派メディアが視聴者を対象とする世論調査結果はともかくとして、世論調査に定評があるとされるリアル・クリア・ポリティックスでも、バイデン氏有利の平均支持率の差は討論会前に6~7ポイントだったところ、討論会後(8日現在)は9.7ポイントまで拡大し、さらに広がる傾向を見せていると言われる。
 ところが、CNN報道に慣れた私たち日本人には別世界と思えるような世論調査結果がある。Sunday Expressというイギリスの保守系タブロイド紙に掲載されたDemocracy Instituteという、ワシントンD.C.とイギリスに拠点を置く保守系シンクタンクが実施した調査で、保守系ということに注目するよりも、ただの有権者ではなく投票しそうな人(likely voters)1500人に尋ねるというユニークな調査手法に相応の信頼が置かれるべきであろう(実際、2016年のBREXITやトランプ氏当選を予測したと言われる)。トランプ大統領夫妻のコロナウイルス感染後に実施した10月の調査結果が先週発表され、トランプ氏の支持率は46%で、9月の調査から2%ポイントのダウンながら依然、バイデン氏45%を上回っているという(https://www.express.co.uk/news/world/1343305/US-election-poll-donald-trump-coronavirus-covid-joe-biden-exclusive-polling?fbclid=IwAR05ITVKmxLQ9D0iNpqsbbC641Xb1oAHPMYTf2qPIpbbn48Y-1KgYgpcfhQ)。
 今、関心が高いのは、こんなマクロな数字より、白黒決着がついている州を除いたswing statesの動向だろう(フロリダ、アイオワ、ミシガン、ミネソタ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの6州)。驚くことに、トランプ氏の支持率は47%で、バイデン氏43%を4%ポイント・リードしており、結果として選挙人団の票はトランプ氏320、バイデン氏218になるという・・・いやはや驚きだ。
 人々の投票行動に影響を与えるのは、意外にもBLM問題の関連で法と秩序が32%でトップ、それに迫りつつあるのが経済や雇用の問題で30%、コロナ禍の問題は三番目とは言え15%だそうで、それならマクロな支持率の結果は分からなくはない。トランプ夫妻がコロナウイルスに感染したことは、マイケル・ムーア監督は劣勢を挽回するための偽装だと陰謀論を唱えたが、68%の人は投票行動に影響しないと答え、最高裁判事の任命問題も79%の人は影響しないと答えている。先日のテレビ討論会での勝敗は、トランプ氏の勝ち32%、バイデン氏の勝ち18%、引き分け50%というのはちょっと意外だが、いずれにせよ7割の人はこの結果は投票行動に影響しないと答えている。もっと基本的なところで、トランプ大統領のNational Job Approval (職務能力支持率)は50%(対する不支持48%)で、その支持率を人種別に見ると白人56%、黒人40%、ヒスパニック47%と、意外に健闘しているのである。コロナ禍で経済が混乱することさえなければ、現職トランプ氏の有利は動かなかったところであり、実際、70%の人は経済が回復しつつあると答えており、この問題では60%の人がトランプ氏を支持しているという。
 これも一つの世論調査であり、公平に見るならば、まあ、CNNの左派メディアが言うほどバイデン氏が優位なわけではないと思っていたが、稀に見る接戦と言うべきなのだろう。残り3週間で何があるか分からない、実に興味深いところだ。
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