風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

たかが野球、されど野球

2024-05-05 18:12:26 | スポーツ・芸能好き

 連休初日の5月3日は、読売ジャイアンツの球団創設90周年記念特別試合「長嶋茂雄DAY」で、長嶋さんが降臨された効果か、今季の巨人には珍しく打線が繋がって、阪神との伝統の第一戦を8―5で勝利した。岡本和真に久しぶりの一発が出たのは、まさにミスター効果だろうか。坂本勇人は186度目の猛打賞で、ここぞとばかりにミスターに並ぶセリーグ・タイを記録したのはさすがだった。

 昨日の第二戦も、菅野智之が前夜にぎっくり腰になったらしいのをものともせず、7回1失点と粘って、延長10回に吉川尚輝のタイムリーを呼び込んで連勝した。今日の第三戦は、さすがに阪神を相手に3タテにはならず、しかし岡本和真が初日の一発だけで3連戦11打数1安打と抑え込まれたことには期待を込めて喝を入れたい。瞬間風速で4割を超えたのも束の間、その後はなかなかエンジンが点火せず低迷している。

 ところでこの連休は特に出掛けることもなく、ひょんなことから、江川卓さんのYouTube動画「たかされ」をまとめて楽しむ仕儀となった。江川と言えば、空白の一日のことを大学のローマ法の教授が擁護したことがつい昨日のことのように懐かしく思い出されるが、長嶋さんや王さんがいたV9の黄金時代に続き、その残り火のように江川・西本が競い合った準・黄金時代は、かれこれ40年前のことになる。1984年の日本シリーズで江夏さんを超える10連続⁉︎奪三振を狙った(9人目の大石を三振・パスボールで振り逃げにしようとして、結局バットに当てられて、8連続でストップした)とか、掛布雅之との間では(二人の対決を楽しみにしているファンのために)初球は絶対に振ら(せ)なかったとか、今だからこそ話せる裏話が面白い。一発病とか手抜きなどとマスコミから叩かれたが、当時は完投を当然のように狙って、打者の目が慣れる3〜4巡目となる7〜9回に再びギアを上げるために加減していたもので、広島の高橋慶彦さんは、衣笠さんや山本浩二さんに対するときと球威がまるで違ったと証言される。ある時、1アウト1塁にランナーを背負ったときの攻め方をコーチから聞かれて、インハイで三振と答えて一喝された江川に対して、シュートで詰まらせてゲッツーと答えた西本が褒められたのは、二人の良い対照だが、江川は後からコーチに、お前はそれでいいと言われたのは彼の面目であろう。ボール球など無駄だから投げたくないと公言し、ストライクゾーンに投げ込んで空振り三振(バットはボールの下で空を切る)に仕留めることに無上の喜びを見出した。それほどに、ふわっと浮くような真っ直ぐだと形容されたのは、決して重力に逆らっていたわけではなく、威力があるから他の投手のように落ちなかっただけのことで、直球とカーブだけでコーナーに投げ分けて抑える投球術は圧巻だった。渾身の球を打たれたとしても、それは打者の技術が上回っただけのことで悔しくない、などと飄々と言ってのけるなど、よほど自信がなければ出来ることではない。

 思えば、長嶋X村山、王X江夏、そして江川X掛布など、チームプレイの野球にあっても、手に汗握る宿命の対決があったものだが、今は(例えば岡本和真と誰かの対決など)俄かに思い浮かばない。投手は分業制で、先発して6回3点に抑えればクォリティ・スタートと言われる今は、球が飛びにくいだけではなく、ほぼ全力投球の投高打低で、抑揚や加減などあったものではない。今となっては長閑な時代だったと言うべきか、効率一辺倒ではないドラマが懐かしいと思うのは、年寄りの戯言に過ぎないのだろう。

 

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