風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

戦後最悪の日韓関係

2019-11-04 14:59:47 | 時事放談
 「戦後最悪」が枕詞となった日韓関係だが、この形容は、政治レベルの問題に留まらないからでもあるだろう。かつて安倍首相は、中国は難しいことを言って来るが交渉はできるのに対し、韓国とは交渉にならないとボヤいたらしいが、このあたりの嫌韓感情は、もはや草の根にまで幅広く、しかも骨の髄まで!?沁みわたっているかも知れない(苦笑)。私の周囲のみならず、たとえば日経ビジネス・オンラインやプレジデント・オンラインで、韓国に宥和的な記事が出ようものなら(例えばアメリカの識者は日本の譲歩を期待している、とか、今こそオトナの対応をとり韓国に恩を売るべき、など)、読者コメント欄の90%以上にコテンパンに叩かれるのだ(アメリカの識者はどこの誰か、米政権にも厳しい進歩派ではないのか、それに対して反論しなかったのか、これまでさんざん恩を売って来ても仇で返してきたではないか、恩を恩と思う相手ではない、云々)。韓国とビジネスの関係がないわけではないだろうに、そんな比較的意識が高いであろう層でも韓国を見限り始めていると言うべきだろう。そうすると安倍政権もおいそれと韓国と妥協出来ない(どちらかと言うと、安倍首相としては世論の支持を背景に韓国を冷たく突き放しているところがあるが 笑)。
 他方で「八方塞がり」が枕詞となった韓国の文在寅政権も、ようやく風向きを変えつつある、すなわち即位の礼に際して文大統領の親書が安倍首相に手渡され、今日もASEAN関連会議で訪れているバンコクで11分間の会談があったとわざわざ韓国大統領府が伝えるなど、日本に秋波を送っているようだが、そうは問屋が卸すのかどうか。確かにアメリカは、GSOMIA破棄で神経を逆撫でされ、最近も在韓米大使館侵入事件で「urge」というキツイ言葉を使って善処を申し入れた。中国はどうも韓国という国を信用していないようだし、北朝鮮は文氏個人の名指しでの批判は控えるものの、韓国に対して相当落胆しているのは事実だろう(そして金委員長の性格からすると、文大統領を利用し尽くすために、文氏を突き放すところまで行かず、むしろ援けているとさえ言える)。国内経済も1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックに迫る厳しさだと言われ、反・文政権デモが広がりを見せている。他人の不幸を笑うつもりはないが、自業自得やないかとソッポを向きたくなる。この2年半の文在寅政権の日本に対する理不尽な仕打ちはおよそ国家間の関係の度を越してしまった。
 では、文大統領は本当に困っているのかと言うと、対外関係に関する限り、実は孤立感はそれほどではないのではないかと言われる。実際に対外関係悪化は政権支持率には影響しないようだ(日本でも外交は選挙の点数稼ぎにならないと言われる)。ある朝鮮半島専門家に言わせれば、そもそも韓国人は“狭間”に生きる民であって、アメリカから離れて中国に擦り寄るかと言うとそうではなく、むしろ安全保障も経済も中国に依存するようになると不安になるので、アメリカの顔色を窺い、中国の顔色を窺いつつ、安全保障をアメリカに頼り、経済を中国に依存するという、“ねじれ”を実は心地よく思っているというのだ。大国に囲まれた大陸の端にへばりつく半島の地政学上の微妙で複雑な心理は、流れの激しい玄界灘を挟んで距離を置く島国の日本人には分かり辛い。
 そうすると、混迷する経済や閣僚のスキャンダルなど、内政がうまく行かないことで韓国民の失望を招いているのが余程応えているのだろうか。アメリカからの圧力もあるのだろうが、それにしては手のひらを返すように日本に歩み寄るのは余りに安直で楽観的に見える。先の専門家も、最後は日本が何とかしてくれるだろうという「甘え」が依然としてあって、しかも当然、日本はそうするだろうという「自信」を持ち始めているからというのは、よく聞かれる話だ。先進国に並ぶ経済成長を成し遂げ(しかし、財閥依存のイビツな発展で、しかも日本が斬り捨てた分野をそっくり引き取り、今、そこで中国に追われている)、民主化を達成し(しかし、政治が弱いために韓国社会特有の強い感情を抑えられず、左右の対立に翻弄される)、目の上のたんこぶだった日本が衰退しつつあるように見える(まあ衰退とは言い過ぎで、停滞して見えるのは事実かも)ものだから、なおさらなのだろう。これに文在寅大統領個人のイデオロギーの強さが掛け合わされれば、保守政権の全て(過去に保守政権が成し遂げた歴史すら)を否定し、韓国社会に特有の「正義」を実現するために、異様なまでに「歴史認識」(歴史的事実ではない)へのこだわりがクローズアップされるのだろう。
 日韓基本条約は戦後の日韓関係の基盤を成すものであり、先の専門家は、この原則を崩しかねない徴用工問題で差し押さえ資産が現金化されるのであれば、日韓基本条約をご破算にし、その中で日本が放棄した戦時中の朝鮮半島の資産(総額53億ドルの幾分か?)や供与した3億ドルを請求して、断交してもよいのではないか、とまで言っている。恐らく、そこまでの切迫感が文在寅大統領や韓国民にないことが、日韓問題の核心なのだろう。
コメント
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