風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中国のトイレ革命

2017-12-09 00:59:25 | 時事放談
 米国出張ですっぽり抜けた時間を埋めるために、ここ数週間の出来事をざっと振り返っていて、いびつな進化を遂げつつある中国を形容するのに最も適切な言葉として印象に残ったのが、タイトルで使った「トイレ革命」だ。今や人民日報や軍の機関誌で頻出の言葉らしい。
 既に2014年10月に河北省で全国愛国衛運動委員会主催「全国農村トイレ改造作業推進会議」が開かれ、農村における「厠所革命(トイレ革命)」の動きが巻き起こって、翌2015年4月、習近平国家主席も「トイレ革命」に力を入れ観光の質を向上させるよう命じるなど、前哨的な動きはあった。ここにきて、去る11月20日、共産党の重要会議に出席した習近平国家主席が「全国のトイレの衛生状況を改善すべきだ」といった趣旨の発言をし、その際に「トイレ革命」という表現を使うと、習氏のこの「重要指示」はたちまち各地に伝達され、全国で一大「社会運動」が展開されているのだという。青海省、甘粛省などは「トイレ革命」を省の重点プロジェクトと位置づけたらしいし、山東省済南市は55項目にわたるトイレの管理細則を制定し、市内のすべての公衆トイレに「洗剤、ブラシ、せっけん、ゴミ箱、ゴミ袋」の“衛生5点セット”を配備、担当者による定期巡回体制を整え、今後、「トイレ革命」に貢献した個人と団体に対する表彰も各地で行われるという。上海と深センの証券取引所では、便器などを製造するメーカーの株価は軒並み上昇する始末だ。「トイレをきれいにして、観光業の振興につなげたいほか、庶民の生活と直結する問題にも目を配る親しみやすい指導者を演出したい思惑もあると指摘される」(矢板明夫氏)らしいが、鶴の一声でこれほどの騒動になるのが、一党独裁で、しかも10月の党大会で自らの権力固めを内外に見せつけた習一強の中国らしいところだ。安倍一強の日本では、いくら安倍さんが何を叫ぼうが誰も動いてくれないだろう(笑)。
 中国の増長はとどまるところを知らない。
 今月初め、習近平国家主席は中央軍事委拡大会議で「中国の特色ある社会主義は活気に満ち、西側国家とは鮮明な対照をなしている。多くの途上国の指導者が私との会談で中国の発展の道を学びたいと言っており、『ルックイースト』が一つの流行となっている」と自画自賛したらしい。
 先月末、中国と東欧16カ国はハンガリーの首都ブダペストで首脳会議を開き、中国の李克強首相は地域発展に向けた約30億ユーロ規模の資金協力を表明したが、EUは中国が東欧をテコに対中政策でEUの足並みを崩す思惑だと懸念する。
 先月半ば、中国国営新華社通信傘下の中国紙・参考消息の電子版が「中国がドミニカ共和国に8・2億ドルを投資し、水力発電所などを建設する」と伝えると、台湾の外交関係者は大きな衝撃を受けたという。習近平政権は昨年から、台湾と外交関係のある国を離反させ、国際社会から台湾を孤立させる工作を始めており、今年6月には台湾の長年の友好国だったパナマを奪って、台湾が外交関係を持つ国は20ヶ国に減っていた。ドミニカ共和国はその一つで、「次はドミニカではないか」というわけだ。
 しかし中国の作用に対する他国の反作用も大きくなっている。
 在中国ドイツ商工会議所は、中国共産党が外資系を含む民間企業の中で党組織の拡大を進めていることに対し、強い懸念を表明する声明を発表し、ドイツ企業が中国から撤退することもあり得ると警告した。
 オーストラリアは先月末、外交政策白書を14年振りに改訂し、中国の台頭を踏まえ、同盟国である米国が地域の安定のため影響力を維持していくことへの期待を明確にした。安倍首相が唱え、トランプ大統領も請け売りした、自由で開かれた「インド太平洋」に初めて言及し、地域の民主国家と連携を強めて中国を牽制していく姿勢を打ち出し、日本などと足並みを揃えたという。
 またオーストラリアでは近年、中国出身の富豪や実業家が政党などに巨額献金を行い、政治家に圧力をかけて南シナ海問題に関する発言を封じた疑惑が報じられるなど、経済力を背景にした中国による内政干渉が問題視されているため、中国を念頭に、不当な内政干渉を阻止するため、年内に法案を議会に提出し、外国人からの政治献金を禁止するほか、国外から資金提供を受けて活動する国内組織に登録を義務づけて監視を強化するという。
 この最後の記事なんぞを見ていると、日本は伝統的な日本家屋よろしく、隙だらけで隙間風がぴゅうぴゅう、日本の左翼系メディアは数十年前から中国に買収されているのではないかと疑いたくなるし、北朝鮮系の朝鮮総連や韓国系の民団などは国内でやりたい放題ではないかと恨めしく思ってしまう。しかしそこは島国・日本の開放的な人の好さと言おうか、したたかさと言おうか、結構、揺れ動きながらも、意外にしぶといのかも知れないと思ったりもする。
コメント
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