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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

二重アイデンティティ

2015-07-22 23:12:53 | 時事放談
 来日中の台湾の元総統・李登輝氏は、今日、衆院議員会館で講演し、「安倍政権が今国会で成立を目指す安全保障関連法案について、『日本が主体的に安全保障に意識を持つことがアジア全体の平和につながる』と述べ、歓迎した」と報じられた(読売)。既に昨年9月に来日したときに、大阪市内で講演して「アジアの平和と安定のため『日本は憲法を改正して真の自立した国家となるべきだ』と述べ」、都内で講演して「日本の集団的自衛権の行使容認は日米同盟を強固にするものだとして、『決断した安倍晋三首相に心から敬意を表したい』と語った」記事が引っかかった(いずれも産経Web)。朝日や毎日は果たしてどう報じたか、興味本位で記事検索をかけたところ、どちらも今月9日に来日予告の記事が出たきりだった(本日午後11時現在)。よほど真性保守の李登輝さんのことがお気に召さないらしい。
 先週末の「ウェークアップ!プラス」では、(この李登輝さんだけでなく)東南アジア周辺国や北・南米の環太平洋諸国はおしなべて日本の集団的自衛権の(限定)容認と安保法制に賛成または支持しているのに対し、中国と韓国だけが反対表明している地図を示し、辛坊さんは、日本のメディアはこういった情報も報道すべきと、チクリとコメントしていた。
 ちなみに最近ちょっとリベラルが行き過ぎの感があるNYタイムズは、20日付の社説で、与党が先週、衆議院で安全保障関連法案の採決を強行したことについて「安倍総理が戦後日本の平和主義への痛切な誓いを尊重するのか大きな不安を引き起こした」と批判したらしい(TBS、以下同じ)。「戦後70年を経てアジアにおける中国の強引さが目立つ中、『世界第3位の経済大国がより大きな国際的な役割を果たそうとするのは驚くにあたらない』と指摘」しつつも、「『問題はそうした目的ではなく安倍総理の手法だ』として、安倍政権が集団的自衛権の限定的な行使を憲法改正ではなく解釈の変更で認める法案を衆参両院で与党が多数を握る状況で採決している点を批判」したというのである。さらに「『こうした変更は戦後日本の核心にふれるもので短絡的な過程で決めるには重大すぎる』と論じ、学者やデモ隊の反論が巻き起こっているほか、世論調査でも法案に反対する声が多数であることも挙げ」たという。挙句、「日本とアジア地域では、安倍総理が、長く平和主義をとってきた日本を戦争に導くことが心配されている」と強い懸念を示して社説を締め括ったというが、実に誤解を招く表現だ。ここで言うアジア地域とは、文意を正しく捉えるなら、中国と韓国のことしか指していないが、それがフェアと言えるのかどうか。むしろ誰の意向を受けて記事を書いているのか明らかと言うべきだろう(恐らくリベラル派日本人の某と思う)。
 リベラルが多いことで有名な憲法学者や弁護士界やメディアが、見事に中国・韓国と共鳴しているのは、今に限ったことではなく、従軍慰安婦問題や教科書問題などでも同じ構図である。戦後平和主義者(リベラル)が熱烈支持する平和憲法と、戦前の国家主義者(保守)が支持する日米安保に引き裂かれた日本の「二重アイデンティティ」(添谷芳秀氏による)が70年を経てなお続いている異常・・・ということになるのだろう。あるいは中国あたりの世論工作によって、それが維持・強化されていると言うべきか。日本人ながらも尋常ならざる不思議な国だと思う。
コメント
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