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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

トランプ氏 暗殺未遂(続)

2024-07-16 21:28:33 | 時事放談

 大統領または大統領候補が銃撃を受けたということで、懐かしいエピソードが紹介されていた。

 レーガン元大統領は、就任後まもない1981年3月の受難で、シークレットサービスや側近から有無を言わせず車の中に押し込まれたので、トランプ氏のような咄嗟の(しかし状況からすれば超人的な)パフォーマンスを見せることが出来なかったが、搬送先の病院で医者や看護師に向かって、「君たちはみんな共和党員だよね?そうならいいけど。」と問いかけた機転(ウィット)が高い評価を受けた、というものだ。ここまでは、かつてどこかで読んだことがあるが、続きがあって、その中の医師が、「今日一日は全員が共和党員です、大統領閣下。」と切り返したということだ。ちょっと出来過ぎのところもあるが、如何にもアメリカ人好みの小噺である。

 トランプ氏の場合は、恐らく伝説的となるであろう写真が拡散された(上記の通り)。星条旗を背景に(但し旗が裏向きなのが残念)、フランスの七月革命を描いたドラクロアの名画「民衆を導く自由の女神」を彷彿とさせる構図である。英紙ガーディアンは、トランプ氏の流した血は写真に宗教画のような効果を生んだと指摘し、そんなトランプ氏のことを、フランス紙フィガロは「闘技場に立つ剣闘士」と評し、ドイツ紙ウェルトは「劇場効果の天才」と評したそうだ。撮影者はAP通信ワシントン支局チーフ・フォトグラファーのエバン・ブッチ氏で、2020年5月にミネアポリスで起きた白人警官による黒人男性暴行事件を巡る抗議行動を撮影し、AP通信チームの一員として翌21年ピュリツァー賞速報写真部門を受賞している。CNNによれば、駆け出しの頃にイラクやアフガニスタン情勢を取材した経験があり、戦闘状態に身を置いたこともあったお陰で、混乱の中でも落ち着いていられたと語ったそうだ。「全てに焦点が合っていたこと、自分のすべき仕事をやり遂げたことに満足している。」(ブッチ氏)

 ブッチ氏もお見事だったが、トランプ氏もやはり役者である。出来過ぎとも思う。

 だからと言って、彼こそ大統領に相応しいかと言うと、それはまた別の話である。

 

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トランプ氏 暗殺未遂

2024-07-15 22:57:51 | 時事放談

 先週は、選挙イヤーでいろいろ驚かされることがあると書いたら、今週は、選挙演説中のトランプ前大統領が銃撃を受けたことに驚かされた。右耳上部に銃弾を受けたか、あるいは(プロンプターのような?)ガラスの破片を受けたという報道もあるが、ご本人の命に別状はなかったのは何よりだった(聴衆に犠牲者が出てしまったが)。

 ちょうど二年前、安倍元首相が銃撃を受けたのを、つい思い出してしまう。もし存命なら、今の自民党の体たらくは許さなかっただろうし、この秋の自民党総裁選に三度目の出馬があったかも知れないと思うと、なんだかやりきれない思いにとらわれる。

 トランプ氏は、一発目の銃声で「伏せろ」の声と身を挺するシークレット・サービスに守られて、身を屈めた。そして暗殺者は即座に、警護するシークレット・サービスのカウンター・スナイパーによって射殺された。如何にも銃社会のアメリカらしい、手慣れた対応には感心してしまう(もっとも、金属探知機で持ち物チェックされる会場内はともかくとして、会場外であっても演説場所から120~150メートル程度離れた建物の屋上という、ライフルで狙撃可能な場所を警戒しなかった警護の責任を追及する声があがっているようだ)。一方の安倍元首相は、一発目の銃声に伏せずに振り向いて、命を落としたのだった。平和な日本の脇の甘さと詰られても反論のしようがない。

 さて、トランプ2.0は、同盟国としては勘弁して欲しいと、つい思ってしまうが、決めるのはアメリカ国民だ。今回の銃撃事件に際して、トランプ氏は軽傷だったこともあり、会場を後にするときに拳を何度か突き上げて健在ぶりをアピールしたのは、さすがだった。大統領にはこうした力強さを、アメリカ人は求める。

 もっとも、選挙戦はまだ四ヶ月近く残されており、9月10日に第2回テレビ討論会が、また、10月には(2016年のヒラリー・クリントン氏のメール問題や、2020年のトランプ氏の新型コロナウイルス感染などのような)見えないイベント「オクトーバー・サプライズ」が控えて、予断を許さない。同盟国としては、国際秩序にも十分に目配りする大統領を期待するが、バイデン氏のように舌禍で弱腰に付け込まれたり、トランプ氏のように不規則発言で懸念国の行動を牽制したり、結局、どちらが良いのか、実はよく分からないのが正直なところではあるのだが。

 何はともあれ、最悪の事態でアメリカが、ひいては世界が混乱するのを避けることが出来たのは幸運だったと思う。そしてトランプ氏が強運であることも思わないわけにはいかない。

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東京都知事・七夕決戦

2024-07-09 23:10:46 | 時事放談

 今年は選挙イヤーと言われ、各地の様々な選挙でサプライズが続出し、世間を賑わせている。

 6月初めのEU議会選挙では、極右や右派などのEU懐疑派が躍進し、フランスやイタリアやオーストリアでは国内第一党になったのには驚いた。これを受けたフランス・マクロン大統領が国民議会(下院)解散・総選挙の賭けに打って出たことに驚いた上、マクロンの狙い通りに極右が失速したこと、更に左派連合が最大勢力になったことにも驚いた。マクロン政権の年金改革が不人気だったようで(不人気でもやるべきことをやったのは偉いと思うが)、彼の求心力が低下すると噂されるのは気の毒ではあるし、EUやNATOの結束という意味でも不安がある。

 イギリス下院選挙が予想外に早く実施されたのはともかくとして、5年前に屈辱的な惨敗を喫し、今後10年は立ち直れないと言われた労働党が、下馬評通りとは言え見事にカムバックしたことには驚いた。労働党が野党の立場から総選挙で勝利するのは27年ぶり、総選挙で勝つこと自体19年振りだそうで、久しぶりの政権担当能力が問われる。

 …とまあ、前置きが長くなった。一昨日の七夕に東京都知事選が行われ、現職有利は既定路線と言ってもよく、得票数こそ前回から大幅に落としたものの、8時の開票直後に小池さんに当確が出たことに驚きはない。蓮舫さんが国政の政局を持ち込んで「反自民・非小池」とやらかして不発だった上、共産党と組んで伸び悩んだことにも驚きはない。財政に余裕がある東京都で政策論争を仕掛けたところで勝ち目はなさそうだ。ところが、広島県安芸高田市の前市長(石丸伸二氏)が、緑の古狸と必殺仕分け人(ちょっと古い)という注目の二人に挟まれながら善戦し、165万票を獲得して二位に食い込んだことには驚いた(残念ながら二位ではダメなのだが、というのもちょっと古い)。知名度不足をSNSでの発信や連日連夜の街頭演説で克服したと賞賛されるのは、既存政党が飽きられているとは言え、並大抵ではない。「出来ることは全部やったと言い切れる」と胸を張ったのは天晴れと言うべきで、次に来年秋の広島県知事選出馬を狙っているのではないかと囁かれるのは、なかなか野次馬的には楽しみだ。

 選挙はやってみなければ分からない。また、選挙にはマーケティングが働く余地が多く、実はやってみると面白いものだ。私は、選挙好きの父に騙されて、小5の時に児童会書記に当選し、小6で会長に当時史上最多得票で当選したことがあって、応援演説にひょうきん者のカサマツ君を起用したり、ポスターや演説に凝ったりして、子供心に選挙なるものを楽しんだことを懐かしく思い出す。だからと言って、過去最多の56人もの立候補者の中に多数の売名出馬があり、ポスター掲示板ジャックやら掲示スペース販売が騒がれたのは、ちょっと大人げない。かつての私の真摯なるも心から楽しんだ選挙活動は所詮はガキの遊びで、見習えとは言わないけれども。

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北朝鮮の得意満面

2024-06-29 01:13:36 | 時事放談

 プーチンと金正恩が接近している。困った悪の枢軸である(苦笑)。それで、金正恩が得意なのには相違ないだろう。コロナ禍やウクライナ戦争で、世界の注目を浴びることが出来ず、干上がっていたのだ。

 近づいたのはプーチンだった。ウクライナ戦争が重荷になりつつあっても、自らの威信を保つために、おいそれと戦争をやめられないプーチンは、片や、独裁者なのにまともに国家経営も出来ないのかと馬鹿にしているかどうかは知らないが、貧しい中で核とミサイルの開発に余念がない北朝鮮を、都合の良い兵器廠代りにしようとしている。

 犯罪以外にまともな稼ぎがない金王朝の三代目には願ったり叶ったりだろう。かつては偽ドル札の印刷や麻薬の栽培に手を染め、(北朝鮮が制裁対象であることを知らない)アフリカの一部の国への武器輸出や軍事サービスの提供を行い、今は暗号資産の盗掘や(国連安保理から禁止されている)労働者派遣など(どうやら日本のアニメ制作の下請けまでしていたことが報道された)で、どうにか食い繋いでいる。貧しいせいではあるが、旧・ソ連時代の兵器を後生大事に持ち続けた甲斐があった。同じく旧・ソ連時代の兵器に頼るロシア軍には、恐らく部品の互換性もあり、使い勝手が良いはずだ。

 しかし、提供された武器・弾薬の半分ほどは使いものにならないほど、品質が劣悪だったらしい。プーチンからは足元を見られることだろう。冷戦期の同盟時代を記憶する人民は、見返りにプーチンから食料援助を期待するようだが、新たな相互援助の「同盟」(プーチンはついぞこの言葉を口にしないし、国連憲章やそれぞれの国内法の手続きに従い、との留保がついている)関係の下で、三代目は自前技術だけでは突破出来ない衛星や先端兵器の技術の提供を受けることを期待するようだか、どうなることやら。相変わらず、三代目と人民との間の意識のギャップは如何ともし難い。

 何しろ、法的には今なお朝鮮半島で戦争中という危機を偽装することでしか国家をまとめ切れないのだ(もっと言うと、金王朝の成り立ちも甚だ怪しく、存在自体が偽装まみれだ)。三代目にとっては「貧者の兵器」である核やミサイル以外に、韓国との間で比較優位はなく、結果、お隣の独裁者である中国共産党がその統治の正統性の源とする社会の安全や経済成長を、真似できない三代目は、声高らかに米韓との緊張を演出し、核やミサイル開発の成功を宣伝しないことには、統治の正統性を担保出来ないのだ。そんな茶番をいつまで続けるのかと、冷めた目線を送る我々との間の意識のギャップもまた如何ともし難い。

 かの喜劇の名優チャールズ・チャップリンは、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」(Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.)と言った。至言であろう。人民には、かつて満州に跋扈した匪賊のような統治能力の乏しい王朝の下で気の毒でならないが、世界の目には、かつてトランプ前大統領と交渉決裂したように統治の保全に汲々として現実を顧みず誇大妄想する三代目の北朝鮮の、現代にあってなお孤立した秘密国家ぶりにも、よく当て嵌まる。もっとも、北朝鮮の置かれた地政学的な難しさと歴史的現実には同情するから、さしずめ三代目はそんな厳しい現実に翻弄される深窓の令嬢といった趣きであろうか(その得意満面の裏側を想像するならば…)。

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台湾の自立意識

2024-06-22 09:34:48 | 時事放談

 台湾で頼清徳氏が新総統に就任することに決まってから、どんな就任演説をするか注目された。

 前総統の蔡英文さんは、就任演説で「中台関係」や「中国」を表現する際、「両岸関係」や「対岸」など、今から思えば穏やかな言葉を使ったが、頼清徳氏は「中国」で通したそうだ。中台が「一つの中国」原則を確認したと中国が主張する「1992年コンセンサス」には全く言及せず、この5000字余りの演説の中で、「中華民国」という呼び名を9回、「中華民国台湾」を3回繰り返したそうだ。さすが筋金入りの独立派で、確信犯である。

 これを息を殺して見ていた中国が面白かろうはずはない。早速、人民解放軍を派遣して威圧して見せる、いつもの嫌がらせをした。

 全体として、「独立」そのものは封印したものの、台湾における台湾アイデンティティの高まりを捉えて現状維持を主張するという、彼としては抑制気味ながらも、彼自身のアイデンティティを支持する人にもぎりぎり応える内容だったように思う。その上で、頼氏は「中国からの様々な威嚇や浸透工作」に対処するため、国防力を強化し、経済安全保障を構築して、「世界の民主主義国家」と連携を進める考えを示した。

 ウクライナ情勢は、ユーラシア大陸の東端の台湾にも影を落とす。ウクライナ制圧というプーチンの妄動を易々と許すならば、習近平をも台湾制圧へと駆り立てると言われて来た。ロシアと地続きのウクライナと違って、台湾島を軍事制圧するのはそれほど簡単ではなさそうで、余程の覚悟が要りそうだが、やや手垢に塗れたと言えるかもしれないハイブリッド戦ならお手軽で、既に始まっている。そして、プーチンの非道に立ち向かうウクライナ国民を、NATOを始めとする自由民主主義諸国が支える構図に乗じて、頼清徳氏も自由民主主義諸国への働きかけを強めて行く。

 話は変わるが、最近、宋美麗の伝記を読んだ。悪名高い?宋三姉妹の三女で、蒋介石に嫁いだ。因みに次女は孫文に嫁ぎ、長女は財閥に嫁いだ(長女の旦那は中華民国の行政院長(NO.2)にも就いた)。20世紀前半の中国で栄華を極め、中国の運命を左右したと言われるファミリーである。混乱を極めた当時、10%をピンハネするだけでも莫大である。1949年に大陸を追い出された蒋介石に対してアメリカが冷たかったのは腐敗が酷かったからだと言われるのも分かる気がする。習近平は権力闘争で反腐敗を旗印にしたが、このあたりは東洋的専制の体質だろう。

 それはともかく、宋美麗はアメリカ留学経験があり、南部訛りの流暢な英語を操り、蒋介石が軍人あがりで、さばけた人ではなかったので、彼女が蒋介石の通訳をしたり、アメリカ・メディアのインタビューを受けたり、寄稿したりして、アメリカ世論に多大な影響を与えたと言われる。ルーズベルト大統領夫人に取り入り、米国史上、議会演説した外国人女性としてはオランダ女王に次ぐ二人目で、全米にラジオ放送され、また、タイム誌の表紙には、1927年に蒋介石と結婚した時の顔写真が掲載されて以来、1955年までの28年間に、二人の写真が実に11回、宋美麗単独では4回も掲載されたらしい(譚璐美著『宋美麗秘録』より)。日本はついぞ大陸の戦闘で中国に負けたことはなかったが、世論戦で負けたとも言える。

 今も東アジアで行われているのは、世論戦を含む認知戦である。GDP比2%の軍事費も重要だが、私たちに認知戦への備えは出来ているだろうか。

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