ブルーシャムロック

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12月の曇りの日_05

2019-01-11 09:29:37 | 逆襲の藤隆
「でも、{先生}は僕のことをまるで娘と結婚する男性のような目で見ていたよ。」
私の彼、朝岡蓮次はハンドルを握っている私をちらりと見た。
私が入れっぱなしにしていた、ブラックモアズ・ナイトだかブリテン諸島のトラッドバンドの
音楽が甲高くなっている。
私平賀知世は、朝岡蓮次と中学校一年の頃から付き合い始めてもう七年立つ。
こいつとは成人の年齢まで付き合うとも考えていなかったので、
びっくりしつつも、苦笑しながら。
「まあ、私は{先生}の愛娘みたいな感じだからね。戸籍上の娘は私が母親だと
思っていた女と{先生}との不義密通の末に生まれて先生が引き取って育てた。
もしかしたら、彼女が出奔したのは、自分の正体を知ったのかもしれない。」
と、私は答えたんだ。
「ああ。そんなものか。」
朝岡蓮次は表情を換えない。彼女が許せないのだ。
戸籍上の娘は、蓮次君にとっては半ば恋敵だ。
そんなことを言ったら、しばらく戸籍上の娘と付き合っとったバーミリオンの方を
憎むべきだが。
「バーミリオンはマゼンタさんがいる。二人は似合いのカップルだよ。
もしかしたら、あの戸籍上の娘を見限ってマゼンタさんと付き合い始めたのは
君とのバランスを取るためだろう。」
蓮次君は素頓狂なことを言う。
「そうね。」
私は苦笑するしか無い。
車は横浜に向かっている。
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