「新緑あふれる小原の里」はどの辺りに位置するのだろうか。和紙と四季桜で有名になった小原の和紙工芸館よりは南の、山深い、こんなところは車も通らないだろうと思うような、洞のような谷間を開いたところだった。三方を山に囲まれているから、台風のような強風が吹いても、直接に強い風は当たらないだろう。
ここに女性陶芸作家の工房があり、おそらく多くの人の訪れに備えたのだろうギャラリーがあり、山のツツジや若い木々が彼女の作品に活けてあった。集まったのは56人に及ぶ。多治見の料理屋から運ばれてきた懐石弁当をいただき、各自が持参したお酒を飲んだ。それぞれが自慢のお酒を次々と出してきて、ビックリする大宴会であった。
昼食の後は、庭園デザイナーで落語もこなす、私も何度か聞いたことのある知り合いの落語を楽しんだ。以前よりもはるかにうまくなっているなどと言っては誠に失礼だが、「おだいはいらねえ」なんて誠に太っ腹だ。体形も年を重ねて太っ腹にはなっていたが、外見だけではなかった。工房の周りは彼が作った庭で、持ち主の自然への思いが深く感じられた。
大方の人は夕方になる前に帰られたが、居残り組の12人は更に夜の会へと進み、今度は主の手作りのカレーと友人が持って来てくれたソバと、そしてまた持ち込まれたお酒で大いに飲み、食べ、話し、新録の谷間で熱く燃えた。午後8時、工房の主を残して、近くの笹戸温泉の宿の迎えのバスに乗り込み、真っ暗な山道をぐるぐる回って宿へ着いた。今朝、カーテンを開けると眼下に大きな川が見えた。
さらによく見ると、カモが3羽河原を動き回っている。エサやりのおばさんが言うには、「5羽いるんだけど、1羽がなかなか出てこない」らしい。エサがもらえるので、すっかりカモは人に慣れてしまっている。宿の窓から河原を眺めた時、恋人らしい男女が川面を眺めていたので写真を撮りたかったのにカメラを持って来なかったので、私のケイタイで写してみたが小さな点が寄り添っていただけだった。