『世界に一つだけの花』を始めて聞いた時、素晴しい歌詞だと思った。それから学校や合唱団でも歌われるようになり、今ではかなりの人々に愛される名曲となった。ところがこの歌を批判する人々がいる。もちろん、どんなものでも100%の支持はないし、たとえ真実というものがあっても、受け入れられない意見の人もいる。だから、批判があることを問題にする気はないし、大いに意見を述べ合うことの方が大事だと思う。
『世界に一つだけの花』の歌詞を見てみよう。「花屋の店先に並んだ いろんな花を見ていた 人それぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね この中で誰が一番だなんて 争うこともしないで バケツの中誇らしげに しゃんと胸を張っている それなのに僕ら人間は どうしてこうも比べたがる? 一人ひとり違うのにその中で 一番になりたがる? そうさ僕らは 世界に一つだけの花 一人ひとり違う種を持つ その花を咲かせることだけに 一生懸命になればいい」(17行省略)「小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから No1にならなくてもいい もともと特別なOnly one」と結ばれている。
今日、テレビで日体大の女子大生45人が集団行動の演技を完成させるまでを特集していた。バラバラの45人が心を一つにして行進できるためには、集団としての仲間意識が形成されなければならない。ここではNo1は必要ないけれど、Only oneというわけでもない。けれど行進を繰り返す45人は、それぞれに思いを抱えてこの演技に参加して来ているから、ひとり一人を見ればやはり集団演技と言えどもOnly oneである。
『世界に一つだけの花』を批判する人は、「頑張らなくてもいいという風潮を助長する」とか、「ニートを認めかねない」と言う。経済産業省の審議会では、「もともと特別なOnly oneなんて存在しない。競争への覚悟を教えるのが教育だ」という意見も出た。この歌の歌詞のどこを読んでいるのだろう。歌は花を咲かせるために一生懸命になろうと呼び掛けている。それはNo1になるためではなく、自分の花を咲かせるためだが、競争を否定しているわけではない。競争ではトップは一人だけれど、トップになれない人にもそれぞれ素敵な花があるのだから、それを咲かせたらいいと言っているに過ぎない。
人は誰でも「特別なOnly one」なのに、「もともと存在しない」と言うのは、人をどう見ているのだろう。日本の高校生が偉くなりたいと思っていないことが話題になった時、その原因がこの歌にあるような批評もあったが、とんだ見当違いだと思う。高校生は親の世代を見て、冷静に現実を捉えているのだろう。言わば私たちよりも覚めている。それは、私たち世代からすれば情けなくて寂しいが、ある意味では私たちよりもリアリティがあると言える。