ガラスの向こうに見える京都タワー 講演中の長友 薫輝先生(フラッシュが届かない)
2日(5月14日)目の講義は津市立三重短期大学生活科学科准教授の長友 薫輝先生による「地域医療」についてでした。
1.地域における医療保障の確立へ向けて
2.国保再生へ - 健康を支える仕組みと問題点を把握する
3.地域調査の実践例を学び、地域から具体的な提言を - 国保実態調査から
の3つのテーマに分けての講義でした。
1の「地位における医療保障の確立へ向けて」では、昨日の報告にもあったように、格差が広がり、「貧困状態」におかれている人々の増加(これは同時に購買力の低下を意味する)は深刻化しており、「生活保護水準以下」の貧困率が25.5%にも達している現状など、貧困の実態を把握し、その声を代弁する活動の重要性が分かりました。
地域で貧困状態にある労働者を支える活動が不可欠であり、労働相談だけでなく、生活相談にも対応していかねばならない。とくに、「自己責任論」のもとに、「『助けて』といえない30代」は、本当に自分の努力が足りなかったために貧困になったのだろうか。
高齢者の孤独、孤独状態の深刻化(無縁社会)。その根底には貧困状態がある。
また、「その日暮らし」「明日のことなど考えられない」生活のため、「どんな労働でも引き受けざるを得ない」ことから、結果としてますます労働条件が悪化し、働く人たち全体の労働条件をも低下することになる。(非正規で働く人たちの底上げが大切 → 「労働」と「社会保障」を結びつけて考え、理解することが重要。
税金の本来の役割である「所得再配分機能」が弱められ(かつては、最も高かった所得税の最高税率70%が今では40%へ大きく引き下げられ、一方で消費税により、収入のない人ーたとえば無収入の子どもでも税金を払うことになってしまったことに見られるように、低所得者に重い負担へと変えられた)、格差がますます拡大している。これにより、低所得者の階層が固定化され、さらに貧困世帯の再生産(貧困の連鎖)(=貧困の親のもとで、子どもも貧困の道を歩まざるを得ない)との説明。これは、これまで私自身が考え、実感していたことと一致している。
医療の面では、「診療報酬の削減」や「自治体財政健全化法」、それにより「公立病院改革ガイドライン」で自治体病院を含め、地域医療の崩壊へと連なってきた。いわゆる、民主党政権でも引き継がれている「医療費抑制」政策である。
これにより、地域医療が成り立たなくなると、ますます過疎化が進んでしまう。また、地理的な原因だけでなく、「お金がないから病院へ行けない」という実態が潜在的に増えてきている。私の周りにも多数見受けられ、現実に相談を受けている。ここから見えてくるのは、お金がないと健康にもなれない=所得の格差が健康格差に連動していることが三田でも起きている。
「国保」加入者のうち実に55%が無業者
国民健康保険の加入者のうち、自営業者はわずか14~15%に過ぎない。こんなにも少ないのかと、驚いたのと合わせ、国保には、仕事をしていない人(無業者)が55%も加入しており、とても「助け合い」の制度ではないことわかる。
以下に、法的にもその事実を示す
1938年にできた旧法の国民健康保険法では、「国民健康保険は相扶共済の精神に則り疾病、負傷、分娩又は死亡に関し保険給付を為すを目的とするものとす」とあったが、
1958年に改定された現在の法律では、「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保険の向上に寄与することを目的とする」とある。
この点からしても、法で「社会保障」の位置づけがしっかりなされており、決して「助け合い」の制度ではないことが分かる。しかも、低所得者や働いていない人が加入しており、その人たちから、収入の20%~25%もの保険税(料)を徴収しようとしていることこそが、問題だと言える。(他の保険に加入できない、全ての人を国保に加入させている)
大阪府門真市での「国保実態調査」(門真国保実態調査実行委員会:委員長 長友 薫輝氏)では、国保加入世帯の7割が世帯所得100万円以下であり、8割が200万円以下という実態。
国保税を払えば、ますます生活できなくなる。国保税の滞納率はなんと69.9%。
国保が貧困を拡大する実態となっている。
さて、三田市の実態はどうだろうか?昨年国保税が20%も引き上げられたが、国保会計の改善は図られず、今年度から4年間は、毎年1億6千8百万円ずつ、一般会計から国保会計へ繰り出しすることになった。(これ以上の国保税引き上げは限界)
不景気で仕事が激減したところへ、事故にあい、主な収入源が断たれてしまった方の相談を最近受けた。同じような事例がほかにもあった。
格差社会、貧困、高すぎる国保税・・・深く考えさせられる議員研修でした。