常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

林檎

2021年10月09日 | 日記
林檎が生る風景は懐かしい。我が心の風景である。生まれてもの心がつくころ、家の近くにリンゴの木が植わっていた。夕日に林檎の実が赤く光る景色を忘れることはない。その実を無断で採って食べたのは、子どもには自然の心情であったろう。それがしてはいけないことだと厳しく戒めたのは父であった。酒が好きであまり教わることのない父であったが、このときの怒りの目と厳しい体罰はいまだに忘れられない。

神話ではアダムとイブの林檎が有名だが、ほかにも黄金の林檎が登場する神話がある。アルカディアにアタランテ―という美人の女猟師がいた。彼女の父は男の子を望んでいたため、生まれてすぐに山に捨てられた。山で猟師の一団に拾われて、熊の乳を与えられて育った。猟師たちに猟の方法を教えられたアテランテーは、すくすく山野を飛び回り、美しい女性として育った。弓矢の技術も走る力も男を凌駕していた。やがて評判が国中に伝わると、結婚を求めて若い男たちが彼女のもとに来るようになった。彼女は条件を出し、自分と走る競争をし、勝てば結婚を許そう。もし勝てなければ命を貰う、というものであった。我と思う若者が次々と勝負を挑んだ。走り終わってゴールで弓矢を持って待ち構えたアテランテーは遅れて走ってくる若者を容赦なく矢で射殺した。多くの若者が勝負に敗れて命を落としていった。

そこへ現れたのが、アテランテーに恋したヒッポメネスである。彼は女神のアフロディーテに相談し、アテランテーに勝負に勝つ方法を教わった。アフロディーテは黄金の林檎を三つ渡し、アテランテーが追いついてくると林檎を落すように教えた。実際の勝負になってヒッポメネスが追いすがるアテランテーの前に林檎を落すと、それを拾うために足を止めた。三度これを繰り返すとさすがのアテランテーも林檎の惑わされて敗けてしまい、結婚をすることが決まった。

今年も林檎の季節がやってきた。白桃、シャインマスカット、刈谷梨、ラフランス、フジリンゴ。果物王国の山形の秋は食欲をそそる。

林檎の実赤し遠嶺に雪を待たず 大串章


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