みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1427「マラソン」

2023-10-29 17:34:57 | ブログ短編

 彼は快走(かいそう)していた。トップグループにいるわけではないのだが、沿道(えんどう)には応援(おうえん)する人たちが声援(せいえん)を送(おく)っている。その中に、なぜか彼の名前(なまえ)を叫(さけ)んでいる女性がいた。彼は思わず身体(からだ)をこわばらせた。彼にとって、その女性は訳(わけ)ありのようだ。
 彼女は、彼と併走(へいそう)しながら言った。
「なんで連絡(れんらく)してくれないのよ。あたし、ずっと待(ま)ってるのに…」
 彼は、なぜ彼女がここにいるのか分からなかった。誰(だれ)にも話していないはずなのに…。彼はちらちらと彼女を見ながら、「なんで…どうして…」を繰(く)り返した。
 彼女は息(いき)を切(き)らしながら、「あなたが…あたしのこと…無視(むし)するからでしょ」
 どうやら、彼女はそれほど体力(たいりょく)はなさそうだ。そんな彼女を見て彼は言った。
「もういいだろう。ついて来ないでくれ。君(きみ)とはもう…」
「そ、そんなわけにはいかないわよ。だって…あたし…、あなたのことが…」
 彼女は足がもつれてバタンと倒(たお)れた。彼は、思わず立ち止まってしまった。彼女の方に戻(もど)ろうかと思案(しあん)していると、彼女が声をあげた。
「いいから行って。あたしは大丈夫(だいじょうぶ)だから。ゴールで待ってるわ!」
 彼は何ともいいようのない表情(ひょうじょう)を浮(う)かべて、再(ふたた)び走り出した。彼は果(は)たしてゴールに向かうのか? それとも、途中(とちゅう)で棄権(きけん)ってこともあるかもしれませんね。
<つぶやき>この二人の関係(かんけい)は? 二人のゴールは、いったいどこにあるのでしょうか。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1426「不条理」 | トップ | 1428「苦手な人」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事