僕(ぼく)は友だちからクーポン券をもらった。でも、それが何のクーポンなのか、どこで使えるのかまったく分からなかった。詳(くわ)しいことは何も書かれていないのだ。その友だちも、知り合いの人からもらったものだそうだ。
僕は、とりあえず財布(さいふ)の中へ入れておくことにした。まぁ、どこかへ行ったときに使える店が見つかるかもしれない。でも、その機会(きかい)はまったく無(な)かった。
数年後のことだ。家の近くに不思議(ふしぎ)な店が開店(かいてん)した。開店のときの宣伝広告(せんでんこうこく)とかまったく無かったので、何の店なのか分からない。それに、普通(ふつう)なら店の中が見えるように窓(まど)とかあるはずなのに、そこには入口(いりぐち)の扉(とびら)だけなので入りずらいこと此(こ)の上なしだ。でも、夕方(ゆうがた)には閉(し)まっているようなので、飲(の)み屋でないことは間違(まちが)いないだろう。
僕はあることに気がついた。扉に貼(は)ってある小さなマーク。これは…どこかで見たことがあるような…。僕は思わず声をあげそうになった。急いで財布を開いて、あのクーポン券を出してみた。そこには、扉にあるマークと同じものがあった。
僕は何だか嬉(うれ)しくなった。今まで引(ひ)っかかっていたものがスッキリとれたような…、そんな感じだ。その時だ。店の扉が開いて、中から若(わか)い女性が出てきた。
その女性は、店の前にいた僕を見て言った。「どうぞ、お入り下さい」
僕は明(あき)らかに動揺(どうよう)して、「いやいや、僕は…。お、お客(きゃく)とかじゃ…」
女性は僕が手にしているクーポン券を指差(ゆびさ)して、「それ、使えますよ」
<つぶやき>いったい何のお店なのか? ここは、冒険(ぼうけん)するのもありかもしれませんよ。
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