みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1313「危険な男」

2022-10-02 17:47:46 | ブログ短編

 朝。出社(しゅっしゃ)した彼女は、社長(しゃちょう)に挨拶(あいさつ)しようとして絶句(ぜっく)した。
「しゃ、社長…。何て恰好(かっこう)をしてるんですか?」
 社長は斜(しゃ)に構(かま)えて答えた。「どうだ。危険(きけん)な男に見えるだろ?」
 彼女は思わず、「いや、意味(いみ)が分かりません。これは…どういう…?」
「だから…。女性は、とかく危険な男に惹(ひ)かれる…と聞いたんでね。どうだろうか…」
 彼女は対応(たいおう)に苦慮(くりょ)して、「そりゃ…まあ、そんな女性もいるかもしれませんが。でも…」
「君(きみ)も、こういう…危険な男に惹かれたりするんじゃないかと思って…」
 彼女は事務的(じむてき)に答えた。「いえ。あたしは、どちらかというと堅実(けんじつ)な方(かた)のほうが」
 社長はちょっと残念(ざんねん)そうに、「ああ…、そうだよね。うん…、そうだと思ったよ」
 社長がいつまでも立ちつくしているので、彼女は仕方(しかた)なく言葉(ことば)をかけた。
「社長。まさか、その恰好でクライアントに会うおつもりですか?」
 社長は我(われ)に返って、「えっ、なに? まだ何か…」
「ですから…。もうすぐ新しいクライアントの方がおみえになるはずでは?」
 社長は、急に慌(あわ)てだした。着ている上着(うわぎ)を脱(ぬ)ぎ捨(す)てると、ズボンに手をかけた。
 ちょうどそこに、他の社員(しゃいん)たちが顔を出した。二人のいるのを見ると、何も見なかったように部屋(へや)から出ようと――。彼女は声を上げた。
「ちょっと、待ってください。これは違(ちが)いますから。社長が勝手(かって)に――」
<つぶやき>こんな困(こま)った社長はいないと思いますが…。いったいどんな服装(ふくそう)だったのか?
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