同窓会(どうそうかい)。それは懐(なつ)かしさもあるのだが、自分(じぶん)がどれだけ成功(せいこう)したかを見せつけ優越感(ゆうえつかん)に浸(ひた)る機会(きかい)でもある。参加(さんか)するには、それなりのステータスがなければ――。
彼は、29歳(さい)のフリーター。去年(きょねん)、勤(つと)めていた会社(かいしゃ)が倒産(とうさん)して、今は求職中(きゅうしょくちゅう)である。そんな彼に、中学の同窓会の案内(あんない)が届(とど)いた。彼は出席(しゅっせき)するかどうか迷(まよ)っているようだ。卒業以来(そつぎょういらい)、同級生(どうきゅうせい)とほとんど会うことはなかった。どんなヤツがいたかも覚(おぼ)えていないくらいだ。それに、無職同然(むしょくどうぜん)の彼にとっては、惨(みじ)めな自分をさらすようで気が進(すす)まなかった。
出欠(しゅっけつ)の返信期日(へんしんきじつ)が迫(せま)っていたある日。彼に電話(でんわ)がかかって来た。相手(あいて)は、中学のクラスメートの女性だ。彼女の名前(なまえ)を聞いて、彼は中学の頃(ころ)の記憶(きおく)が蘇(よみがえ)ってきた。そして、胸(むね)がざわついた。彼女は、彼にとって憧(あこが)れの娘(こ)だったのだ。
彼女は幹事(かんじ)のひとりだった。同窓会の出席者(しゅっせきしゃ)が少ないので、彼に「出席してくれないか」とのことだった。彼は、同窓会の案内を見直(みなお)した。そこに彼女の名前が…。名字(みょうじ)は変わっていなかった。まだ結婚(けっこん)していないのか…、それとも…。
彼はそれとなく訊(き)いてみた。すると、まだ独身(どくしん)だと答(こた)えが返ってきた。彼は思わず、出席すると返事(へんじ)をしてしまった。彼女に会いたい衝動(しょうどう)にかられてしまったのだ。電話を切って、彼は後悔(こうかい)した。どんな顔をして、彼女に会えばいいんだ?
<つぶやき>楽(たの)しんでくればいいんじゃない。そこから何か、つながることがあるかもよ。
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