みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1317「会いたい」

2022-10-14 17:27:54 | ブログ短編

 同窓会(どうそうかい)。それは懐(なつ)かしさもあるのだが、自分(じぶん)がどれだけ成功(せいこう)したかを見せつけ優越感(ゆうえつかん)に浸(ひた)る機会(きかい)でもある。参加(さんか)するには、それなりのステータスがなければ――。
 彼は、29歳(さい)のフリーター。去年(きょねん)、勤(つと)めていた会社(かいしゃ)が倒産(とうさん)して、今は求職中(きゅうしょくちゅう)である。そんな彼に、中学の同窓会の案内(あんない)が届(とど)いた。彼は出席(しゅっせき)するかどうか迷(まよ)っているようだ。卒業以来(そつぎょういらい)、同級生(どうきゅうせい)とほとんど会うことはなかった。どんなヤツがいたかも覚(おぼ)えていないくらいだ。それに、無職同然(むしょくどうぜん)の彼にとっては、惨(みじ)めな自分をさらすようで気が進(すす)まなかった。
 出欠(しゅっけつ)の返信期日(へんしんきじつ)が迫(せま)っていたある日。彼に電話(でんわ)がかかって来た。相手(あいて)は、中学のクラスメートの女性だ。彼女の名前(なまえ)を聞いて、彼は中学の頃(ころ)の記憶(きおく)が蘇(よみがえ)ってきた。そして、胸(むね)がざわついた。彼女は、彼にとって憧(あこが)れの娘(こ)だったのだ。
 彼女は幹事(かんじ)のひとりだった。同窓会の出席者(しゅっせきしゃ)が少ないので、彼に「出席してくれないか」とのことだった。彼は、同窓会の案内を見直(みなお)した。そこに彼女の名前が…。名字(みょうじ)は変わっていなかった。まだ結婚(けっこん)していないのか…、それとも…。
 彼はそれとなく訊(き)いてみた。すると、まだ独身(どくしん)だと答(こた)えが返ってきた。彼は思わず、出席すると返事(へんじ)をしてしまった。彼女に会いたい衝動(しょうどう)にかられてしまったのだ。電話を切って、彼は後悔(こうかい)した。どんな顔をして、彼女に会えばいいんだ?
<つぶやき>楽(たの)しんでくればいいんじゃない。そこから何か、つながることがあるかもよ。
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1316「恋の迷路」

2022-10-11 17:35:24 | ブログ短編

 彼は、昼休(ひるやす)みに友だちに呼(よ)び出された。顔を合わせるなりその友だちは、
「お前、ひかりと付き合ってるんだろ。どうして神谷(かみや)さんからの告白(こくはく)を断(ことわ)らなかったんだ?」
 彼はまごつきながら答(こた)えた。「お前、どうしてそれを……。だって…、あれだ。神谷さんは、俺(おれ)がひかりと付き合っててもかまわないって言うから…」
「何てヤツだ。お前、ひかりのことが好(す)きじゃないのか? 二股(ふたまた)かけるなんて!」
「お前が怒(おこ)ることじゃないだろ。それに、ひかりから<好き>だって言われて付き合い始めたけど…。俺は、ひかりのことが好きなのかどうかは…」
「お前、付き合ってんだろ。好きだって言われたんだろ。何だよ、その態度(たいど)は。許(ゆる)せん!」
「何でお前が熱(あつ)くなってんだよ。お前…、まさか、ひかりのことが好きだったのか?」
「違(ちが)うよ。お、俺が、好きなのは…。神谷さんなんだ! あの娘(こ)、何か…いいだろ?」
「なにニヤけてんだよ。お前ってさ、松下(まつした)みのりが好きなんじゃないのか? そう聞いたぞ。お前、俺には二股だって責(せ)めるけど、お前は何股かけてんだよ」
「そ、それは…。別に、いいじゃないか。俺の場合(ばあい)は、誰(だれ)にも迷惑(めいわく)かけてないし――」
 友だちはやけくそになったみたいに、「そうだよ。俺は、誰とも付き合ってないよ。好きだって言ってるけど、誰にも告白してないし。全部、俺の妄想(もうそう)だよ。何か文句(もんく)あんのかよ!」
<つぶやき>好きになるってどういうことなのか…。恋(こい)の迷路(めいろ)に分け入ってみませんか?
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1315「しずく178~勝敗は?」

2022-10-08 17:29:23 | ブログ連載~しずく

 ここまでだと思ったのか、エリスは引き揚(あ)げの指示(しじ)を出した。男達は急いで車に乗り込むと、急発進(きゅうはっしん)させて逃(に)げて行く。エリスはそれを見届(みとど)けると、不敵(ふてき)な笑(え)みを浮(う)かべて消(き)えてしまった。柊(ひいらぎ)あずみは息(いき)をついてみんなに声をかけた。
「大丈夫(だいじょうぶ)? みんな、よく頑張(がんば)ったわね。アキは…、怪我(けが)してない?」
 アキは小さく肯(うなず)いた。まだ、震(ふる)えが止まらないようだ。川相琴音(かわいことね)がアキに言った。
「こんな時に悪(わる)いんだけど。涼(りょう)さんが襲(おそ)われて怪我をしたの。治(なお)してくれない?」
 あずみが駆(か)け寄って、「どういうこと? 誰(だれ)にやられたのよ」
「さっきの、姿(すがた)が見えないヤツよ。怪我はたいしたことないと思うけど、千鶴(ちづる)さんがアキを呼(よ)んで来てって…。だから、わたし…」
 神崎(かんざき)つくねは琴音に近寄って言った。「ありがとう。あなたのおかげで助(たす)かったわ。あなたには、あいつが見えてたの? どんなヤツだったか教えてくれない?」
「姿は、見えないけど…。見え方がそこだけ違(ちが)うっていうか…。うまく説明(せつめい)できないわ」
 あずみが言った。「さぁ、帰(かえ)りましょう。きっと、美味(おい)しい料理(りょうり)ができてるはずよ」
 ――ここは、黒岩(くろいわ)たちの拠点(きょてん)のひとつ。黒岩が部下(ぶか)からの報告(ほうこく)を受けていた。
「それで、新しく入った娘(むすめ)から、どんな能力(ちから)を引き出せたんだ」
「はい。かなり有益(ゆうえき)な能力(のうりょく)です。これを使えば、人心(じんしん)の制圧(せいあつ)が可能(かのう)になるはずです」
<つぶやき>新しく入った娘って、あまりのことなんでしょうか。彼女は無事(ぶじ)なのかな?
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1314「絶体絶命」

2022-10-05 17:30:58 | ブログ短編

 彼はベッドの中でまどろんでいた。陽(ひ)の光が優(やさ)しく射(さ)し込んでいる。
「もう…朝(あさ)か…」彼は目をしばたかせてそう呟(つぶや)くと、また目を閉じた。
 その時だ。玄関(げんかん)のチャイムが鳴(な)った。そして、聞き覚(おぼ)えのある声がする。彼が付き合っている彼女の声だ。彼はハッとして、
「何で…。友だちと旅行(りょこう)に行ったはずじゃ…」
 彼は飛(と)び起きた。彼の隣(となり)には、裸同然(はだかどうぜん)の女性がまだ寝息(ねいき)をたてている。外(そと)から鍵(かぎ)を開ける音がした。彼は、彼女に「いつでも来ていいよ」と、格好(かっこう)つけて合鍵(あいかぎ)を渡(わた)したのだ。何で渡してしまったのか、今さら後悔(こうかい)しても、もう遅(おそ)い。
 その時、彼の視界(しかい)の隅(すみ)に時計(とけい)が現れた。それは、どうやらタイマーのようで、残(のこ)り十秒を表示(ひょうじ)していた。彼は心の中で呟いた。
「どういうことだよ。十秒で対処(たいしょ)しろっていうのかよ。そんなのムリじゃねぇか…」
 彼は、いろんなシミュレーションを重(かさ)ねてみた。しかし、どう考えても、ベッドに寝(ね)ている女性のことを、どう彼女に説明(せつめい)すればいいんだ!
 タイマーはカウントダウンを続けている。残りはわずか三秒だ!
 彼はベッドの女性を布団(ふとん)で隠(かく)すと、玄関へ走った。結局(けっきょく)、彼はノープランでこの局面(きょくめん)を乗り切ろうというのか…。しかも、彼はパンツ一枚しか着(つ)けていなかった。
<つぶやき>これは最悪(さいあく)ですよね。こんな男は、けちょんけちょんにしてやりましょう。
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1313「危険な男」

2022-10-02 17:47:46 | ブログ短編

 朝。出社(しゅっしゃ)した彼女は、社長(しゃちょう)に挨拶(あいさつ)しようとして絶句(ぜっく)した。
「しゃ、社長…。何て恰好(かっこう)をしてるんですか?」
 社長は斜(しゃ)に構(かま)えて答えた。「どうだ。危険(きけん)な男に見えるだろ?」
 彼女は思わず、「いや、意味(いみ)が分かりません。これは…どういう…?」
「だから…。女性は、とかく危険な男に惹(ひ)かれる…と聞いたんでね。どうだろうか…」
 彼女は対応(たいおう)に苦慮(くりょ)して、「そりゃ…まあ、そんな女性もいるかもしれませんが。でも…」
「君(きみ)も、こういう…危険な男に惹かれたりするんじゃないかと思って…」
 彼女は事務的(じむてき)に答えた。「いえ。あたしは、どちらかというと堅実(けんじつ)な方(かた)のほうが」
 社長はちょっと残念(ざんねん)そうに、「ああ…、そうだよね。うん…、そうだと思ったよ」
 社長がいつまでも立ちつくしているので、彼女は仕方(しかた)なく言葉(ことば)をかけた。
「社長。まさか、その恰好でクライアントに会うおつもりですか?」
 社長は我(われ)に返って、「えっ、なに? まだ何か…」
「ですから…。もうすぐ新しいクライアントの方がおみえになるはずでは?」
 社長は、急に慌(あわ)てだした。着ている上着(うわぎ)を脱(ぬ)ぎ捨(す)てると、ズボンに手をかけた。
 ちょうどそこに、他の社員(しゃいん)たちが顔を出した。二人のいるのを見ると、何も見なかったように部屋(へや)から出ようと――。彼女は声を上げた。
「ちょっと、待ってください。これは違(ちが)いますから。社長が勝手(かって)に――」
<つぶやき>こんな困(こま)った社長はいないと思いますが…。いったいどんな服装(ふくそう)だったのか?
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