みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1172「脱出」

2021-12-15 17:57:30 | ブログ短編

 街(まち)は荒(あ)れ果(は)て、通りにはお腹(なか)を空(す)かせたゾンビたちがうろついていた。人間(にんげん)の姿(すがた)はどこにも見えない。だが、ブラインドを降(お)ろしたコンビニの中に彼女たちはいた。
「ねぇ、どうすんのよ? あたしたち、ここから出られないじゃない」
「心配(しんぱい)ないわよ。食料(しょくりょう)だってちゃんとあるし。きっと、誰(だれ)かが助(たす)けに来てくれるわ」
「あんたって、お気楽(きらく)すぎるわよ。どこに電話(でんわ)しても誰もでなかったじゃない」
「ねぇ、あたしたちもゾンビになっちゃうのかな? あたし、絶対(ぜったい)イヤよ」
「ははぁ、それ面白(おもしろ)いィ。もし、ゾンビになったら写(しゃ)メ撮(と)ろうよ」
「いい加減(かげん)にして。ここから出るわよ。近くのモールまで行けば何とかなるかもしれない」
「えっ、だってあそこまで1キロはあるわよ。どうやって行くのよ?」
「走(はし)ればいいじゃない。競走(きょうそう)しようよぉ。あたし、負(ま)けないからねぇ」
「そんなのムリでしょ。外(そと)に駐(と)めてある車(くるま)で行きましょ。あそこまでなら…」
「誰が運転(うんてん)すんのよ。免許(めんきょ)持ってないでしょ。それに、鍵(かぎ)がかかってるかもしれないわ」
「わぁ、すごいィ。みんなでドライブできるなんて。お弁当(べんとう)とか、持ってってもいい?」
「もう、好(す)きにしなさいよ。あたしが確(たし)かめてくるわ。エンジンをかけたら――」
「ねぇ、ちょっと待(ま)ってよ。もっと、よく考えてからにしましょうよ」
「あの…。あたし、トイレ行ってきてもいいかなぁ? さっきからずっと我慢(がまん)してたの…」
<つぶやき>非常時(ひじょうじ)ですから、無免許(むめんきょ)でも…。でも、彼女たちは無事(ぶじ)にたどり着けるのか?
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