みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1173「後悔」

2021-12-17 17:45:55 | ブログ短編

 あの時、別の選択(せんたく)をしていたら、まったく違(ちが)う人生(じんせい)になったかもしれない。何かの壁(かべ)にぶち当たったとき、誰(だれ)しもそう思うことが――。
 彼は人生に行き詰(づ)まっていた。店(みせ)の経営(けいえい)が上手(うま)くいかず、店を手放(てばな)すことにしたのだ。閉店(へいてん)の日、別れた彼女が訪(たず)ねてきた。彼女とは、結婚(けっこん)を考えたこともあった。
 彼女は軽(かる)い会釈(えしゃく)をすると、「久(ひさ)しぶり…。あの、閉店するって聞いたから。ほら、開店(かいてん)するとき、大変(たいへん)だったじゃない。だから…」
 彼は、どう対応(たいおう)すればいいのか分からず、「ああ…。慰(なぐさ)めに来てくれたのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど…。お疲(つか)れさまって、言いたかったから」
「そうか…、ありがとう。でも、驚(おどろ)いたよ。まさか、君(きみ)が来てくれるなんて…。嬉(うれ)しいよ」
「あの…。よりを戻(もど)すとか、そういうあれじゃないからね」
「そ、そんなこと分かってるよ。こんな俺(おれ)と一緒(いっしょ)になってもな…」
「これから、どうするの? 店の借金(しゃっきん)とかあるんじゃ…」
「まあなぁ。でも、何とかなるさ。俺、実家(じっか)に戻ることにしたんだ。しばらくは家の手伝(てつだ)いでもしようと思って…。田舎(いなか)だけど、良(い)い所なんだ。よかったら君も…」
「だから…、付き合う気はないって言ったでしょ」
「冗談(じょうだん)だよ。まったく、頭が固(かた)いのは変わんないなぁ。そこも…好(す)きだったんだけど……」
<つぶやき>誰でも後悔(こうかい)してることあるんじゃない? でも、前を見るしかないんだよね。
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