とある場所(ばしょ)――。あの初老(しょろう)の紳士(しんし)を前にして、川相初音(かわいはつね)がひざまずいていた。その周(まわ)りには数人の男たち。紳士はすごい形相(ぎょうそう)で手をあげると、初音の頬(ほお)を打(う)った。初音はその場に倒(たお)れるが、すぐに起き上がり頭を下げた。紳士は息(いき)を整(ととの)えると、静かな口調(くちょう)で言った。
「お前には、あいつらを監視(かんし)しろと言ったはずだ。なぜ、余計(よけい)なことをする」
初音は必死(ひっし)になって答えた。「すいませんでした。でも、あたしにも…何か…」
「ふん、お前ごときの能力(ちから)で何ができるというんだ。この大事(だいじ)なときに――」
「あたしにだってできます。あと少しで、始末(しまつ)することができたのに…」
紳士は、また初音を殴(なぐ)りつけた。初音はされるがままに耐(た)えている。紳士は、
「お前のしたことで、この計画(けいかく)にどれだけ支障(ししょう)をきたすか分かってるのか? 自分から正体(しょうたい)をさらして、どういうつもりだ!」
「でも、新(あら)たな能力者(のうりょくしゃ)を見つけたんです。あたしたちの仲間(なかま)に引き入れた方が…」
「それが余計なことなんだ! どうするかを決めるのは、お前じゃない。この、わたしだ。お前には失望(しつぼう)したよ。しばらく休ませてやろう。もう戻(もど)る必要(ひつよう)はない」
紳士は男たちに目配(めくば)せした。男たちは、初音の腕(うで)をつかんで引き立てた。初音は、
「いや…、いやです。あそこには戻りたくない。お願いです。許(ゆる)して下さい! 許して…」
<つぶやき>これは、どんな罰(ばつ)なんでしょうか? これから、初音はどうなってしまうの。
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