みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1292「ライブラリー」

2022-08-16 17:40:57 | ブログ短編

 ここには、地球(ちきゅう)のすべての歴史(れきし)を記(しる)した書物(しょもつ)が納(おさ)められていた。何列(れつ)もの書棚(しょだな)がどこまでも続き、蔵書(ぞうしょ)の数は天文学的数字(てんもんがくてきすうじ)に達(たっ)していた。そこに、一人の男がやって来た。辺(あた)りを見回して、途方(とほう)に暮(く)れている感じ。
 ここの職員(しょくいん)がやって来て声をかけた。「何か、お探(さが)しですか?」
「あ…いや…。ここは、どこなんですか? どうしてここに来たのか…分からない…」
「ここは地球のライブラリーです。地球で起こったすべてのことを記録(きろく)してるんですよ」
「あの…、私は誰(だれ)なんですか? どうしても、自分(じぶん)のことが思い出せなくて…」
「じゃあ、ここで働(はたら)いてみませんか? ここには、あなたの記録もあるはずです」
「えっ…。何の資格(しかく)も、経験(けいけん)もない私が、ここで働いてもいいんですか?」
「もちろんです。実(じつ)は、人手不足(ひとでぶそく)で困(こま)ってたんですよ。それに、ここに来たということは、あなたは選(えら)ばれた人ということです。資格は充分(じゅうぶん)にあります」
「選ばれた…。それは、どういうことですか? 私は、それを望(のぞ)んでいたということ…」
「それは、分かりません。どうします? ここで、自分を見つけてみてはいかがですか?」
「そうですね。でも、こんなに本があるんじゃ、時間(じかん)がかかりそうですね」
「時間はたっぷりありますよ。では、あなたには人類(じんるい)に関(かん)する記録の整理(せいり)をお願(ねが)いします」
 突然(とつぜん)、周(まわ)りの書棚が勢(いきお)いよく動き出し、<人類>と書かれた場所(ばしょ)で停止(ていし)した。
<つぶやき>こんな図書館(としょかん)に行くことができたら…。知りたいことがいっぱいあります。
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