みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1051「堕天使」

2021-04-15 17:50:53 | ブログ短編

 彼女は、闇(やみ)の世界(せかい)では堕天使(だてんし)と呼(よ)ばれていた。彼女に関(かか)わった人たちは、次々(つぎつぎ)に災難(さいなん)に襲(おそ)われていたからだ。それを知らない人たちは、彼女の美しさに惹(ひ)かれ、彼女のことを信頼(しんらい)し疑(うたが)うことはなかった。今日もまた、彼女に惹かれた男が――。
「失礼(しつれい)ですが、ご一緒(いっしょ)させてもらっても…。私、山本(やまもと)といいます。今、名刺(めいし)を…」
「ここで、そういうのは…」彼女は微笑(ほほえ)んで、「あたし、小夜子(さよこ)です。以前(いぜん)、どこかで…」
「はい、知り合いのパーティーでお目にかかったことが…。あの時は、実業家(じつぎょうか)の息子(むすこ)さんとご一緒でしたね。その時から、あなたのことが忘(わす)れられなくて…。あっ、失礼…」
「かまいませんわ。山本さんは、どこかの社長(しゃちょう)さんなんですか?」
「ああ…。まあ、小さな会社(かいしゃ)ですよ。でも、あの時の彼が、あんな死(し)に方をするなんて…。あなたも、おつらかったんじゃ…。とても仲良(なかよ)くされていたので…」
「あの人のことは、よく知(し)らないんですよ。知り合ったばかりだったので…」
「ああ、そうなんですか…。あの…、もし良(よ)かったら、またお目にかかれますか?」
「ええ、いいですわよ。あなたが、元気(げんき)でいてくれれば、きっと会えますわ」
 男はパーティー会場(かいじょう)を後(あと)にした。しばらくして、会場の外(そと)で事故(じこ)があった。暴走(ぼうそう)したトラックが歩道(ほどう)に突(つ)っ込んだのだ。何人かの怪我人(けがにん)と、死者(ししゃ)が一人――。
 死んだのは、山本というフリーのジャーナリストだったそうだ。
<つぶやき>彼女はときに、純真無垢(じゅんしんむく)な笑顔(えがお)を見せることもある。本当(ほんとう)の彼女の姿(すがた)は…?
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