みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1052「算数の時間」

2021-04-17 17:44:02 | ブログ短編

「こいつが最後(さいご)の一匹(ぴき)だな。こいつをやっつければ…」
「でも、隊長(たいちょう)。本当(ほんとう)にこれが最後の一匹なんですか?」
「偵察機(ていさつき)からの報告(ほうこく)では、全部(ぜんぶ)で五匹(ひき)だ。我々(われわれ)が仕留(しと)めたのは四匹だから、目の前にいるのでちょうどってことだ。みんな、弾数(たまかず)を数(かぞ)えるんだ」
 隊員(たいいん)たちは残(のこ)っていた弾数を報告した。合計(ごうけい)すると84になった。隊長は、
「我々が持ってきた弾が、全部で600だったから、一匹にかかった弾数が…」
「隊長! 大変(たいへん)です。前から、別のヤツが現(あらわ)れました」
「隊長! こ、こっちからも一匹…。こ、これはまずいですよ」
「ちょっと待(ま)ってくれ。えっと…、二匹増(ふ)えたということは…あと必要(ひつよう)な弾数は…」
「隊長、早(はや)く決断(けつだん)してください。このままでは、囲(かこ)まれてしまいます」
「急(せ)かせないでくれ。分からなくなるじゃないか…。今、大事(だいじ)な計算(けいさん)をしてるんだ」
 隊員たちは目配(めくば)せして頷(うなず)き合うと、一人の隊員が隊長の腕(うで)をつかんで、
「隊長、算数(さんすう)の時間(じかん)は終(お)わりです。もう行きますよ。撤退(てったい)するんです」
「何を言ってるんだ。目の前の敵(てき)を前にして、そんなことできるわけないだろ」
「3匹ですよ。まだ他(ほか)にもいるかもしれません。私たちの持っている弾数では、とても太刀打(たちう)ちできませんよ。そんなこと小学生(しょうがくせい)でも分かるはずです」
<つぶやき>こういう場合は、野生(やせい)の勘(かん)を働かせましょうね。そうじゃないと全滅(ぜんめつ)ですよ。
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