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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0943「半歩前へ」

2020-08-24 18:01:12 | ブログ短編

「私のこと…、どう思ってるのかなぁ?」
 彼女は、うつむきながら彼に訊(き)いた。彼は聞こえなかったのか、
「それでさ、今夜(こんや)、行ってもいいかな? 明日から出張(しゅっちょう)なんだよ。お前のところからだと、朝、ゆっくりできるし。いいだろ?」
 いつもそうだ。彼は肝心(かんじん)なことは何も言ってくれない。いつもはぐらかされて、うやむやにしてしまう。私も、はっきりさせるのが恐(こわ)くて、
「うん、いいけど…。じゃあ、夕飯(ゆうはん)、何がいい?」
 こんなんじゃいけないことは分かってる。分かってるけど…。
「何でもいいよ。お前の料理(りょうり)、まあまあ美味(うま)いから。あっ、朝食は軽(かる)いヤツでいいよ」
 彼の言葉(ことば)の端々(はしばし)から、私への愛情(あいじょう)なんてないことは気づいていた。彼にとって、私は都合(つごう)のいい女にすぎない。それでも、今の私は、彼を必要(ひつよう)としていた。
「じゃあ、これから友だちと約束(やくそく)があるからさぁ。先(さき)に帰ってていいよ」
 友だち…。それは、たぶん女性だ。それも、本命(ほんめい)の――。私は、それが誰(だれ)なのか知らない。彼は気づいてないのかもしれないけど、今夜も香水(こうすい)の香(かお)りをつけて――。
 私たちの関係(かんけい)は、そんなに長くは続かないだろう。終わりが来るまでに、一人で生きていけるようにしないと…。今度こそ、半歩(はんぽ)でもいいから前へ進みたい。
<つぶやき>人との関係はイーブンでなくてはいけません。そうでないと壊(こわ)れてしまうよ。
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