「あなたたち、どうしてここに?」柊(ひいらぎ)あずみは驚(おどろ)いて言った。
ハルはアキの腕(うで)をつかまえて、
「あのお姉(ねえ)さんが、ここにおばさんがいるからって」
「おばさんって…」水木涼(みずきりょう)は吹(ふ)き出しそうになるのをグッとこらえた。
あずみは涼を睨(にら)みつけておいて、優(やさ)しくハルに訊(き)き返した。
「しずくは…、お姉さんは一緒(いっしょ)じゃないの? こっちへ来てるんでしょ」
アキが口を挟(はさ)んだ。「それがね、どっかに寄(よ)ることろがあるんだって。ねぇ、おばさん。あたし、お腹(なか)すいちゃった。なんか、美味(おい)しいもの食べたいなぁ」
ハルがたしなめるように、「アキ、そんなこと言って…。迷惑(めいわく)かけちゃダメでしょ」
「だって、夕飯(ゆうはん)、食べてないじゃない。ハルだって、お腹すいてるはずよ」
ここぞとばかりに涼が、「私も、お腹すいちゃったなぁ。ねぇ、先生。お願い」
「あなたまで…」あずみはため息(いき)をついて、「分かったわよ。じゃあ、いつもの定食(ていしょく)で…」
「えーっ、また?」涼はからかうように言った。「もっと高級(こうきゅう)なとこがいいなぁ」
「なに言ってるのよ。給料日(きゅうりょうび)前なの。仕方(しかた)ないでしょ」あずみは涼に呟(つぶや)くと、ハルたちを促(うなが)して、「さぁ、行きましょ。定食だけど、とっても美味しいわよ。それと…、私のこと〈おばさん〉じゃなくて、〈お姉さん〉って呼んでいいのよ。分かったぁ?」
<つぶやき>大人(おとな)にはいろんな事情(じじょう)があるのです。そこんとこ、よろしくお願いします。
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