みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0933「ボケたんや」

2020-08-04 18:03:40 | ブログ短編

 孫娘(まごむすめ)がおじいちゃんに言った。「また、あたしの貯金箱(ちょきんばこ)からお金抜(ぬ)き取ったでしょ?」
 おじいちゃんは首(くび)をひねりながら答(こた)える。「さぁ、どうだったかな~ぁ。全然(ぜんぜん)、覚(おぼ)えとらんわ。わしも、とうとうボケたんかなぁ」
「もう、冗談(じょうだん)いわないで。ちゃんと分かってるんだからね。あのお金は、買いたいものがあるからバイトして貯(た)めてるやつなの。それなのに、どういうことよ」
「買いたいもんって、あれだろ? この間(あいだ)、買い物に行ったとき言ってた…」
「そうよ。もう、早くしないと売(う)り切れちゃうんだから」
「それなら、そこにあるぞ」おじいちゃんは棚(たな)の上を指(ゆび)さした。そこには紙包(かみづつ)みが――。
 孫娘は袋(ふくろ)を開けて、「こ、これって…。うそ…、どうして?」
「わしが買って来てやったんだ。どうだ。じいちゃんからのプレゼントだ」
「わぁ、ありがとう。これ欲(ほ)しかったやつなの――。って、違(ちが)うでしょ。これって、あたしのお金で買ったんじゃない。もう、信(しん)じられない」
「なに言ってるんだ? これは、わしのへそくりで買ったんだ。お前のために、このじいちゃんが、てくてくと店(みせ)まで歩いて…。いやぁ、大変(たいへん)だったなぁ」
「もう、やめてよ。そんな言い方されても――」
「こんなボケ老人(ろうじん)じゃ、感謝(かんしゃ)すらしてもらえないのかぁ。長生(ながい)きなんかするもんじゃ…」
「分かったわよ。もう…。ありがとう。ちゃんと感謝してるから」
<つぶやき>可愛(かわい)い孫娘なんだから、あんまり怒(おこ)らせちゃいけませんよ。ほどほどにね。
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