みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0875「しずく90~和解」

2020-04-25 18:28:57 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくはカレーを頬張(ほおば)りながら、黙(だま)って見つめ合っている三人を見比(みくら)べていた。ハルとアキ、それに千鶴(ちづる)――。しずくは、食べ終わるとおもむろに口を開いた。
「もう、やめましょ。こういうのは…。私はあなたたち二人の気持ちも知ってるし、千鶴さんの気持ちも分かってる。で、提案(ていあん)なんだけど、私がぶっちゃけちゃっていいかな? その方が、これから楽(たの)しく食事(しょくじ)ができると思うんだ」
 ハルがそれに答えて、「私、自分で言います。千鶴おばさん…、おばさんはみんなを裏切(うらぎ)ったんでしょ。どうして、そんなことしたのよ」
 千鶴はひと呼吸(こきゅう)つくと、「あの男たちとつながっていたのは事実(じじつ)よ。でも、それはあなたたちを…、この場所(ばしょ)を守(まも)るためだったの。それしか、選択(せんたく)の余地(よち)はなかった。ごめんなさい。でもね、私のしたことで、誰(だれ)も犠牲(ぎせい)になった人はいないのよ。これだけは信じて」
 しずくが口を挟(はさ)んだ。「あなたたちの両親(りょうしん)のことを思ったら、裏切りは許(ゆる)せないよね。でもね、千鶴さんのこと、許してあげてほしいの。おばさんには、他に方法(ほうほう)はなかったの」
 アキがハルの手を取り言った。「ねえ、許してあげよ。あたしたち、おばさんがいてくれたから、これまで生きてこられたんだから…。そうでしょ?」
 ハルは黙(だま)ってうなずいて、「分かったわ…、おばさんは、私たちの大切(たいせつ)な家族(かぞく)だよね」
 しずくがほっとして言った。「よかった~ぁ。それと、もうあいつらはここへ来ないから安心(あんしん)して。道が分からないようにしといたから。電話も鳴(な)ることないわ」
<つぶやき>仲直(なかなお)りには、きっかけが必要(ひつよう)なのかもしれません。それを見つけられたら…。
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