みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0855「しずく86~秘密」

2020-04-05 18:19:56 | ブログ連載~しずく

 翌日(よくじつ)。遅刻(ちこく)ぎりぎりに水木涼(みずきりょう)が教室(きょうしつ)に飛び込んで来た。席(せき)につくなり、息(いき)を切らしながら呟(つぶや)いた。「ああっ、よかった~ぁ。間に合ったわ…」
 前の席にいた川相初音(かわいはつね)が後ろを振り返って微笑(ほほえ)みながら訊(き)いた。
「どうしたの? あなたが遅刻するなんて珍(めずら)しいじゃない」
「ああ…、ちょっとね。昨夜(ゆうべ)、遅(おそ)くまで起(お)きてたから…。もう、朝飯(あさめし)抜(ぬ)きだよ」
「それは大変(たいへん)。昼休みまでもつのかしら?」
「それは大丈夫(だいじょうぶ)。早弁(はやべん)するから…。母さんがね、弁当(べんとう)多めにしてくれたんだ」
「授業中(じゅぎょうちゅう)に食べちゃダメだからね。あたしまで、お腹(なか)が空(す)いちゃうわ」
 涼は、ちらっと神崎(かんざき)つくねの席を見た。そして、初音をからかうように、
「ああ、それ、いいねぇ。我慢(がまん)できなかったらやってみようかなぁ」
「呆(あき)れた。絶対(ぜったい)にしないでね。――今日は、つくね、お休みなのかしら?」
 涼は、昨夜のことを話すわけにはいかないので、知らないふりをして、
「そうだね、そうかもしれない。どうしたのかなぁ? 早く戻って来ればいいけど…」
 初音は首(くび)をかしげて涼の顔を見つめた。涼はドキッとして訊いた。
「なに? 私、何か変なこと言った……?」
「別に…、何でもないわよ。あなたって…、すごく分かりやすい」
<つぶやき>たわいのない会話(かいわ)の中に、ちょっとした秘密(ひみつ)が隠(かく)れていることもあるのです。
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