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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0720「しずく59~小さな戦士」

2019-11-19 18:28:59 | ブログ連載~しずく

 千鶴(ちづる)の電話(でんわ)のやり取りを盗(ぬす)み見ている二つの影(かげ)。すーっとその場(ば)から離(はな)れると家を抜(ぬ)け出して行った。千鶴はそのことにはまったく気づいていないようだ。
 二つの影は山道(やまみち)を登(のぼ)って、そこから脇道(わきみち)へ入って行った。脇道といっても、ほとんど獣道(けものみち)のようである。しばらく行くと小川(おがわ)に突(つ)き当(あ)たった。子供(こども)でも跨(また)げるような小さな流れだ。草(くさ)をかき分けその川沿いを登って行くと、目の前に高い崖(がけ)が現れた。崖の前は藪(やぶ)になっていて、崖の下の方を覆(おお)い隠(かく)している。二つの影は、その藪の中へ分け入った。
 ――ランプの炎(ほのお)がちらちらと瞬(またた)いていた。一つ、二つ、三つ…。その淡(あわ)い光に照(て)らされて、鍾乳石(しょうにゅうせき)や石筍(せきじゅん)、棚田(たなだ)のような小さな水溜(たま)まりが幻想的(げんそうてき)な風景(ふうけい)を浮かび上がらせている。ここは姉妹(しまい)にとって特別(とくべつ)な場所だった。二人の声が洞窟(どうくつ)の中に響(ひび)いていた。
「やっぱりそうだったのよ。あの人が内通者(ないつうしゃ)だったんだわ」
 ハルは声を震(ふる)わせた。アキはまだ信じられなくて困惑顔(こんわくがお)で呟(つぶや)いた。
「どうして、どうして千鶴おばさんが…。あんなに優(やさ)しくしてくれたのに」
「ここは私たちだけで何とかしなきゃ。あのお姉(ねえ)さんを守(まも)ってあげないと」
「そんなのムリよ。あたしたちだけで、何ができるっていうの?」
「あなただって覚(おぼ)えてるでしょ。パパとママが連れて行かれた時のこと」
「うん、覚えてるよ。あたしたちのこと、敵(てき)に教えた人がいたんだよね。それで…」
「もう、あんなこと絶対(ぜったい)に許(ゆる)さない。私たちも戦(たたか)いましょ。私たちにもできるわ、きっと」
<つぶやき>彼女たちの戦いが始まろうとしています。しずくを守ることができるのか?
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